仮定:「人類は自らの滅亡を望んでいる」を証明せよ

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タイラには博士が何をするつもりか、とっくに見当がついている。 「やめてください、博士。それだけは絶対、やってはいけないことです」 「恩知らずが何を言うか! ならば娘と別れろ。2度と会わないと誓え」 カエデが袖をつかむ。 顔を向けると、彼女は黙って首を横にふった。 「お断りします。博士は将来、お嬢さんが結婚しようとするたびに、そうやって思念具現化装置(マテリアライザー)を使って脅しにかかるつもりですか。カエデさんに自分のエゴイズムを押しつけるのは、やめてください」 肩で息をするタイラに、カエデはそっと寄り添った。 サトー博士はすでに負荷(ストレス)の限界を超えていたが、今、さらに負荷がかかった。 「ピー! ピー! ピー! ウキッ、ウキャッ、ピー!」 博士は壊れた猿の玩具のような、意味不明の音を繰り返し発した。 理性の限界の上に、さらにもうひとつ存在していた人間性の限界。 どうやらサトーは今夜、その垣根を超えてしまったようだ。 「こうしてくれるわ! 滅びよ、人類。砕けよ、地球!」
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