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小説の中に描かれた悲劇的結末たちが具現化して、人類に滅亡が迫っている。
カエデは父親のしでかしたことの重大さに耐えきれなくなったらしい。
顔を手で覆い、床にくずおれた。
「博士の思い込みこそ、間違いであることを証明してみせましょう」
タイラはカエデを椅子に座らせると、自分のノートPCに向かった。
「何をしようというのかね。何をしても無駄だ、無駄」
「お言葉ですが、博士。この世に無駄なものなんて、そうそうありませんよ」
会話をしつつも、わずか47秒で簡素なプログラムを組み上げた。
「Q.E.D.っと」
タイラの節くれだった指が、ENTERキーを押した。
大地から、空を満たす音をかき消すほどの声が湧き上がる。
うねるように高く低く、途切れることなく、歌声が天に昇っていった。
人々の胸を震わせた発生源不明の怪音波こそ、地球の思念なのかもしれない。
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