あたしのことを彼女は

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あたしとたっちぃは、座布団を引き寄せて、しーちゃんを間に挟んでそれぞれ座った。しーちゃんは縁側の上で車いすに座っているから、ふたりで両側から見上げる格好になった。 「でも、元気そうで良かったわ。夏休みが中断されて、落ち込んでないか心配だったのよ?」 たっちぃがほっとした表情で言った。 「えー、このくらいでわたし、落ち込まないよー。時間あったから、夏休みの宿題、とっとと終わらせちゃったし、本読んで過ごすの、好きだしー」 「そっかー、しーちゃんのポジティブは筋金入りだねっ?」 あたしが振ると、しーちゃんは待ってましたとばかりに大きな手振りで、 「そーそー。わたしってば、ウルトラポジティブマジカル少女なのだ!」 言いながら魔法少女のようなしぐさをしておどけて見せた。 しーちゃん、元気だなぁ。良かった。 あたし、そういえば自分の事ばかりで、しーちゃんの心配してなかった・・・ しーちゃんは強いな・・・あたし・・・ 「・・・?」 ふとしーちゃんが止まった後、変な顔をしてあたしを見た。 「みー、どしたの?なんかあった?」 「えっ?」 ふと見ると、たっちいも不思議そうな顔をしてあたしを見ていた。 「なっ、何もないよ?」 あわてて返すと、しーちゃんが車いすの上から身を乗り出してきて、あたしの頭の上から顔を覗き込むように近づいてきた。 「んーーーー??いつものみーなら、ここで小芝居が始まるはずなのに、なんかしおれてる・・・・」 えっ、えっ? しーちゃんのいぶかし気な顔のつっこみに、どう対処していいか、なんだかどぎまぎして、あわてて庭の方に顔をそらせた。 「そーなのよ、今日は朝からおかしかったのよ!」 たっちぃが追い打ちをかけた。たっちぃ・・・ いまそれ、けっこうつらい・・・ 「ふぅーん・・・あのねぇ、悩みはねぇ、早いうちに相談した方が楽になるよ?」 「えええ・・え・・いや・・・あのっ・・・」 「ほらほらぁ、言っちゃいなよぉ、聞いてあげるからぁ」 いやいやいや、だめでしょ・・・ しーちゃんやたっちぃにあの話したって・・・ ってか、なんであたし、キョドってるの? べつに悩んでるって言ってないし、悩んでないよって言うだけじゃないの? 「いやっ、あの、べっ・・・別に悩んでないよ?」 「そうなの?」 「そうなのよ、それなのになんか演技に悩んでるとかって、そんなこと言うのよ?」 「いや、それはその通りだし・・・」 「ふぅーん・・・」 たっちぃ、たぶんナイス?? 「そっかぁ・・・そんなら島崎さんに聞けばいいじゃん。だって島崎さん、演技、上手なんでしょー?」 また優依の名前が出た・・・胸がチクッと痛む。 「あ、うん・・・そなんだけどさ」 「けどさ?」 「あ、ううん、なんでもないよ・・・なんでもない」 「ふぅん」 「あ、そういえばお土産持ってきたんだったわ。みんなで食べましょ?」 たっちぃがカバンの中から紙袋を取り出して、しーちゃんに渡した。 「わぁー、ありがとー。なーに、これ?」 「シュークリームよ?しーちゃん好きでしょ?」 「やったぁ、ありがとーたっちぃ・・・おかーさーん、紅茶いれてー?」 奥からおかあさんの返事が聞こえて、そこからしばらくシュークリームの話しとか、陸上部の部活の話しとか、他愛のない話をして過ごした。
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