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はぁ・・・
あたし・・・
優依の事を信用しよう、自分から聞くのをやめようって決めたばかりじゃない?しーちゃんにちょっと突かれて慌てちゃうって、やっぱりあたし、弱いなぁ・・・
しーちゃんちからの帰り、駅でたっちぃと別れて、ひとり電車のドアにもたれながら考えていた。
「優依・・・」
そっとつぶやくと、胸のあたりがきゅっと痛む気がした。
あきらめに似た覚悟が、求める気持ちとケンカして胸を痛めてるんじゃないかって思った。
優依が男の子からの告白を受けたのだとすれば・・・
あたしはもういらない・・・
電車の外を夕闇が覆い始めた街の街灯の光が、きらきらと舞いながら通り過ぎていく。
そんな見慣れた景色が、やけに胸にしみて来て、また中庭のあのシーンを思い出して胸が痛くなる。
あたし・・・
【まもなくぅー到着しますぅー、お降りのお客様はぁー足元にご注意の上ぇ・・・】
アナウンスにはっと気がついて、あわててカバンを持ち直し、定期をさぐる。カバンのポケットに入れておいた定期を無造作に引っ張り出そうとしたときに、手首に引っ掛かりを感じたけど、無理に引っこ抜いた。
その時。
手首がすっと軽くなって、心からなにか抜け落ちた気がした。
足元に、鮮やかな色のものが音もなく落ちた。
見ると、手首にずっとつけていたミサンガが切れて落ちていた。
「あっ・・・・!」
あわててしゃがんで、拾い上げた。
「なんで・・・今?」
あたしは、突然の事に動揺して、手のひらにのせたミサンガをじっと見つめた。
優依との絆・・・
プロミスリング・・・
恋人の証・・・
あたしが、信じなかったから?
そういうことなの?
優依・・・
あたしは茫然と立ち尽くしていた。
電車が止まって、周りのお客さんに流されて、電車から押し出された。
無くさないようにギュッと握りしめて、ホームの奥の壁際まで行って人の流れを避けた。
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