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壁際に立って、そっと手のひらを開くと、切れたミサンガがだらっと指の間に挟まっていた。
「ああ・・・」
何も考えられなくなっていた。
あたし・・・
じっとミサンガを見つめていたら、頬を涙が伝った。
「優依・・・あたし・・・ダメなのかな・・・ねぇ・・・」
そっとつぶやけばつぶやくほど、どんどん涙が流れ落ちた。
ミサンガを握って、胸に当てる。そうするあいだにも、涙がぼろぼろ出て止まらなくなった。
あたし・・・
ああ・・・
「みゆっ!」
優依の声がした気がした。
そんなはずない・・・あたし、とうとう幻聴が聞こえるようになっちゃった?
涙でぼろぼろに濡れた顔をあげると、すぐ近くでもういちど優依の声がした。次の瞬間に腕に柔らかいものが押し当てられた。
「美優っ、どうしたの?具合悪いの?」
肩を抱かれると同時に、顔にハンカチがそっと押し当てられた。
優依の匂いがした。
「えっ・・・えっ?ゆ・・・優依?どうして・・・」
「なんで泣いてるの?どこが痛いの?」
優依はいつもの可愛い顔で、心配そうにあたしの横から覗き込みながら、そっとあたしの頬の涙をぬぐってくれていた。
あたしは、ここに優依がいることが嬉しくて、優依を正面からひしっと抱きしめた。さっきまでの絶望の反動か、また涙がこみあげて止められなくなった。それでも、この涙は、絶望の涙じゃなくて、嬉しい涙ってことだけは間違いじゃなかった。
なきじゃくるあたしを、優依はそっと抱きしめ返してくれた。
夕方の喧騒と電車の音が、あたしの泣き声をかき消してほしいと思うくらい、あたしは声を出して泣いた。
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