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わたしの想いと彼女の不安
「もうすぐ夏休みも終わりだね」
「そうね・・・」
由美子と並んで駅に向かって歩いていた。駅の向こう側に、まだ夏の余韻を充分にたたえた太陽が、ぽつりぽつりと話す私たちをこれでもかと照らしていた。
美優と二人で会って話しをしたかったのに、肩透かしされてしまった・・・
なんだか割り切れない気持ちが、その太陽のせいでますます濃い影となって私の背中に張り付いているようで、とっても気持ちが悪かった。
「どしたの?調子悪そうね。さっきも着替えの途中、ぼぉーっとしてたみたいだったし」
ひょいっとわたしの前に顔をのぞかせて、由美子が探るような目を向けて来た。
「べ・・・べつに何もないわよ」
「ふぅーん、そぉ・・・」
くるっと前を向いて後ろ手にカバンをひらりと回して肩にかけた。その次の瞬間に、ついっとまたこっちを向いて、いたずらっぽく言った。
「あー、わかった・・・北高の彼のことでも考えてたんでしょ、ほら、あの・・・アイドル事務所の子。なーんかいい感じだったもんねー」
「え?・・・そんなんじゃないわ」
「いーのいーの、隠さなくったってさ。ホントは気になってたんでしょ?」
「由美子っ!違うってホントに。彼は、わたしの友達の彼氏だから。それでたまたま知ってただけだから」
「そーなのねー、そういうことにしときましょぉねー。ふふふっ」
「もー、違うって言ってるのに」
「はいはい」
駅に着いて、結局そのまま由美子と別れた。
もー、由美子ってば思い込むと、人の話し聞かなくなるんだから・・・
夕方の通勤客が増え始めたホームで電車を待つ。
いつものように、こっちをちらちらうかがう男の人や男子学生の視線を気にしつつ、なるべく近くに来られないようにOLさんやおばさまの近くに立つ。
そんないつもどおりの動きをしていても、背中にはりついた気持ち悪さがはがれない。
美優・・・よそよそしい態度は・・・
カブ君とふたりだけで会ってたっていうのがまずかったのかな・・・
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