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「美優!」
心臓が高鳴った。
わたしが、美優を見間違えるわけがない!
美優に。会えた!
あえた!
神様、ありがとう!
わたし、わたし・・・
こみあげる嬉しさをかみしめながら、小走りに美優に駆け寄っていく。
美優は、壁際で手のひらを見つめてじっとしていた。
「みゆっ!」
思わず声をかけた。
美優は、ぴくっと体を震わせたあと、ゆっくり顔をこっちに向けた。目が真っ赤になって、ほおには涙がまだ流れている途中だった。その瞬間、私の頭はまっしろになって、何のために待っていたか、会ったらなんて言おうかなんて、頭の中からすっかり消えていた。
「美優っ!みゆっ?どうしたの?具合悪いの?」
とりあえず涙を拭かないと・・・ハンカチを取り出して、崩れ落ちそうな美優の肩をささえて。
覗き込みながら、そっと頬にハンカチをあてる。
「えっ・・・えっ?ゆ・・・優依?どうして・・・」
うわずった泣き声がちょっとセクシーって思ったけど、泣いている理由が、体調不調とかだといけないし、とにかく事情を聞こうと思った。
「なんで泣いてるの?どこか痛いの?」
わたしがそう言い終わるか終わらないかで、優依はわたしにしがみついて、泣いた。
わたしの肩に顔を押し付けて、泣いた。
わたしは、美優が感情をそのまま出したような声で泣くのを初めて見た。
でもその声は、悲しみに暮れた声というより・・・
そう、まるで赤ちゃんが甘えるかのような、そんな安堵に満ちた泣き声だった。
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