わたしの周りはにわかに

4/4
前へ
/236ページ
次へ
「美優・・・おつか・・・え?・・・泣いてるの?」 「ゆ・・・優依・・・あっ、うん、ごめん・・・ちょっと感情移入しすぎちゃってたのかな・・・」 「みゆー、おつー・・・って・・・えっ?なんで泣いてる?」 「あ、みどり・・・ごめん、大丈夫、あたし・・・」 「ええー、ここってファントム、泣くシーンなんだっけ?」 「えっと、いや、違うんだけど・・・」 「美優、すごいねー、稽古でも全力なんだねぇ・・・」 「えっ・・・っと、うん、ありがと・・・」 美優がみどりに褒められて、泣いてたんだけどなんだか照れた感じになって、なんだか・・・キュンってしちゃったわ・・・可愛い・・・ って、みとれてちゃダメだわ。 「はい、美優。涙拭いて、帰る準備しましょ?」 「あ、う・・・うん」 はにかむようにわたしの出したハンカチを受け取るしぐさが・・・ うーん、可愛いわ。 まずいまずい・・・私がデレてどうするのよ・・・ でも、可愛いぃぃぃ。 ホントはぎゅーってして、キスのまねじゃなくて、ホントにキスしたいのよ!! あー、もう・・・ もんもんとした気持ちを押さえつつ、着替えをしようとカバンのところに行ったら、スマホにメッセが入っていた。 開けてみると、カブ君だった。 【ちはっ!冠城です。土曜の予定が決まったから連絡ね】 【土曜の13:00にランチ予約入れたから、この後送る店に集合ってことで。俺の名前で予約してあるからな】 【じゃあ土曜日にね】 ささっと読んで、豆しばの“了解”ってスタンプ送って、スマホをしまった。 「ねぇー、優依も行くでしょ?プール」 後ろからみどりが声をかけてきた。 「え?プール?」 「そう。夏休み最後の土曜なんだからさぁ、みんなでどっか遊びに行きたいじゃんねぇ?そしたら、やっぱプールでしょ!」 「えっと、ごめん、土曜は用事があって、わたし、無理だわ」 「ええー、残念―・・・カンナが日曜ダメって言うから、土曜がいいなーって今話してたのにぃ」 「ごめんなさい・・・わたし抜きで行ってきてもらっていいのよ?」 「ええー!せっかく演劇部仲良し5人組ってしたのにさー、それじゃ悲しいじゃんねぇ。土曜の用事って動かせないのぉ?」 どきっ・・・ここでカブ君と会うってばれたら、さすがにまずいわよね。 なんとしてもバレないようにしないと・・・ 「うーん、ちょっと相手のある話だし、こんな間際には無理かなぁ・・・」 ちらっと見ると、美優がちょっと不安げな顔してる・・・ あとでちゃんと言っておかないと・・・ 「そっかぁ、しょうがないねぇ。じゃあ、あたしらだけでいこっか、カンナ」 「そうですねぇ・・・残念ですぅ」 「ああ、美優は行けるの?」 「あ・・・あたし?あたしは・・・うん、行けるよ」 チラッとわたしの顔をうかがったあと、美優はそんな返事をした。 美優、行くんだ・・・わたしはちょっと胸の奥がチクッとした。
/236ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加