あたしは我慢が・・・

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優依を見ると、なんだか微妙な表情をしていた。あたしはわざと、大きなしぐさでみんなから離れて言った。 「よいしょっと。あ、あたし帰る前にトイレ行ってくるね。先帰っててもいいよ」 「あ、そぅぉ?でもまぁ、せっかくだから待ってる」 みどりが言った・・・優依は・・・気づいてくれるかな? 「あっ、ああ、わたしも行くわ」 よしっ! 他の娘、だれも来ないでね! って心の中で祈って、部室のドアに向かって歩いて行った。 幸い、カンナもこっちに来ないし、優依とふたりで話せるかな・・・ って思って部室のドアを出たところで、優依が後ろから小走りに近寄ってきて、後ろから肩をたたいてきた。 「美優っ・・・」 「優依」 きょろきょろと周りを見渡す。 誰もいないのを確かめて、優依の耳元でそっとささやいた。 「今日、帰りにいつものコンビニに寄らない?」 「・・・ええ。わたしもそう言おうと思ってたわ」 「うん。良かった。通じてたんだねっ!」 そういって優依の顔を覗き込むと、優依はちょっと複雑な表情をしてから、顔をそらせてつぶやいた。 「そっ・・・その顔っ・・・ずるいっ・・・」 「え?何か言った?」 よく聞き取れなかった、というか意味がよくわからなかったから聞き返してみたけど。 優依は「知らないっ」って言ってそっぽを向いた。 そのしぐさが、その顔が・・・もうあたしにはずっかりご褒美で・・・ 「・・・っ可愛いっ・・・」 ってまたつぶやいてしまった。 「そっ、それより、みどりたちに何て言って今日は別れるの?一緒に帰ろうって言うわよ?」 ななめ向こうを向いたまま、優依が聞いてきた。 「ああ、そうだよね・・・どうしよう」 「・・・土曜日・・・昼までなら、わたしも行けるわ」 「えっ?そうなの?」 「たっ、たぶんねっ・・・なんとかするわ」 「そっか・・・うん。じゃあそう提案してみよう!それなら一緒に行けるねっ!やったっ・・・ったっ!痛ぁぁっっっっっ!!」 あたしはすっかり舞い上がってたみたいで、トイレの入り口に近づいていたことに気がつかず、振り上げた手がトイレの入り口の柱に当たって、手の小指をぶっつけて、しばしその場にしゃがみこんだ。 「みっ・・・美優っ・・・っふふっ・・・ふふふふっ・・・」 「あいたぁぁぁ・・・あははっ・・・あはははっ・・・」 ふたりでまたしばらく笑い転げていた。
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