わたしは地に足がつかなくて

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わたしは地に足がつかなくて

「はい、今日の練習はここまでにします。夏休みもあと少しです。本番まで練習できる回数も限られてきますので、必要なら明日の土曜も練習できますよ?どうしますか?」 最近ちょくちょく顔を出しているけーこ先生がびしっと言った・・・ 一瞬、みんなで、特に1年生はお互いに顔を見合わせて、どうする?みたいな雰囲気でちょっとどよっとした空気が流れた。 わたしは・・・今日は早くに帰りたいわ。だって、だって! 昨日美優と通話した後、ベッドに入って、期待に胸を膨らませて寝―ましょって思った矢先に、あっ!水着!って気がついてあわてて着たらぜんぜん着れなくなってて! 今日どぉしても買いに行かないと、明日のプールにはスクール水着っていう、世にも恥ずかしいことになっちゃうのよ!!! しかも! さっき、音響のタイミング合わせの合間に、美優に耳打ちして、一緒に行けることになったんだし! うふふふっ・・・ なのに! 明日も練習とかなったら、せっかくのこのドキドキをどうしてくれるのよ! それに、カブ君はまぁいいけど、さぁやとみーちゃんには会いたいわ。 誰か、断ってくれないかしら・・・誰も言わないなら・・・ よぉし、わたしがここはびしっと・・・ 「せっ・・・」 「先生!夏休みも最後ですし、宿題を終わらせてない生徒もいると思いますので、明日は休みでいいのではないでしょうか!」 わたしが言いかけたところに、部長がさらさらっと意見を言った。 「ああ、そうね。分かったわ。今週の週末はお休みにします」 部長、さすがね。ありがとうだわ。 「ですが、来週の水曜が9月1日で始業式ですので、月、火はきっちり練習日にします。また、そこで本番同様の完全通し稽古をそれぞれのセットで行いますので、しっかり準備することと、この土日で宿題をしっかり終わらせて、新学期を迎えられるようにしてください」 けーこ先生はそう言ったあと、びっと春日部先輩に目配せをした。 「本日はこれで終わりにします。ありがとうございました!」 「「ありがとうございました」」 春日部先輩の締めで、部員全員がピシッと挨拶をして、今日の練習は終わった。 (ふぅ・・・なんとか休みになったわ) ほっと胸をなでおろす。ふと見ると、美優もほっとした表情で音響の片づけをしようと、コンソールのところに向かおうとしていた。 「美優、片付けましょ」 わたしが言うと、くるっとこっちを向いて、にこっと微笑んだ。 うふふふっ・・・カッコいいわ、美優。 「うん、じゃあ、あたしがシールド全部抜いてコンソールとアンプ片付けるから、優依はシールドを巻いて片付けてね?」 「OK、わかったわ」 なんだかいいわ、この感じ・・・ふたりで一緒にお片付け♪ でもわたしはやっぱりコンソールとかアンプって、さわるとなんか、ぼかーんって爆発しそうで・・・おそるおそるアンプからコードをそっと抜いた。 「優依、大丈夫だよ・・・爆発しないから」 「えっ・・・なっ・・・なんでわたしの考えてたこと・・・わかったの?」 「あはっ・・・だって、優依、前に言ってたしwww」 「あ・・・う・・・うん」 なんか、もー・・・嬉しすぎるんですけどぉぉぉ♡ 「っかわいいっ」 そうやってまた、美優はケーブルを束ねながら、わたしの顔の横で小さくつぶやいた。 はわゎゎゎ・・・ はっ、早く片付けて、水着、買いに行かなきゃ♪
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