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[トリスタン]
ピアノの旋律が響く
心に染みる音色
「世界童話(メルヘン)
コンテスト…?」
「来月から応募受け付け
締め切りは半年後
プロ、アマは問わない
但し新作に限る
世界中から応募ができる」
髭面の男性が話している
「私が…?」
どうしてという表情で答える
「いいチャンスだよ!
世界中の子どもたちに
読んでもらえるよ」
側にいる青年が興奮して言う
「でも…」
戸惑い気味の返事
「こんなチャンス
そうそうないよ
挑戦してみる価値はある」
「僕も社長の言う通りだと思う」
二人に力強く言われる
舞台を見つめる
ダナの歌声が流れる
そして、グレアムのピアノ
ステージの二人を見つめる
「フーちゃん
とにかく真剣に考えてよ」
彼女を真っ直ぐ見て言う青年
「…わかった」
少し考えて答えた
店を出ていく二人を見送り
一人席に座るオフィーリア
演奏を終えたグレアムが一人でいる彼女の席にやって来る
「どうしたの?元気ないね」
いつもとは様子が違う彼女に聞く
「あら、私は変わらないわよ
グレアムはすっかり人気者ね」
なんだか無理に明るく振る舞っているように見えるオフィーリア
少し心配になるグレアム
彼女はといえば目の前のグラスに入ったウイスキーを一気に飲んだ
その様子を伺いながら訊ねる
「最近、アンジーに会ってないの?」その言葉に目を伏せて言う
「今は勉強に集中したいんだって
バイトも辞めちゃったしね」
なんだか寂しげに言う
「やっとやる気になったんだよ
誰かさんのおかげかな」
彼女をじっと見て言った
「誰かさんって?」
上目遣いにグレアムを見る
「もちろん、フーちゃんだよ!」
満面の笑みで言った
「私が?」
自信無さげに聞くオフィーリア
「約束したからって
今はお互いに自分がしなきゃいけないことに集中しようって」
「アンジー」
彼の名をそっと呟く
ー私がしなきゃいけないことー
ガタン
椅子から立ち上がるオフィーリア
「ありがとう、グレアム
アンジーに言っといて!
私も頑張るからって」
彼女の瞳は前を見据えていた
「わかった!
ちゃんと伝えとくよ」
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