青傘の女

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青傘の女

「あの・・・それで、除霊とかお祓いとかして貰えるんでしょうか?」 事務所に戻り元の椅子に座って三十分、私はずっと何やら呟きながら髪を触る男を見続けている。 何を言っても返事は無く、仕方がないので床に散乱している湯呑みの破片でも片付ける事にした。 私が出て行ってから一体何があったというのか・・・ 私を追いかける時、慌てて飲んでいた湯呑みを落として――って、んな訳ないかこの人間は。 破片を拾っているとある事に気が付いた。 零れている飲み物の量がやけに少ない事―― では無い。それは服にひっかけたからというのは見るに明らかである。 それは―― この湯呑み、見た目と違って超安物じゃないか!! そして、この匂い―― 「コーヒーなんかい!!!!」 静かな部屋に響いた声はエコーがかかったように反響した。 しまった、恥ずかしい。 顔中が熱された鉄板の如く熱を放つ。 その時だった、男が突然席から腰を上げたのは。 私は何か言われるのだと心構えをしたが、男は何も言わずに私の隣を通り過ぎ、外へ出て行ってしまった。 え――? 状況を掴む事ができず、男が出て行った戸を見つめて放心状態の私は、再び戸が開いた勢いで肩が竦む。 「何をしているんだ、早く案内しろ」 そう言って出て行こうとするので、私は男を呼び止めた。 「待って、外へ行くんならそんな格好じゃ駄目よ」 首に巻いていたスカーフを解いて折り直すと、男の腰に通して縛る。 運良く無地の布だったので、即席にしては上手く着物の裾に付いたシミを隠せたと、我ながら満足していると、男は丸い眼鏡をかけ直して一言『介添え人のようだな』とだけ言った。 あぁそうですか、そうですよ! どうせお礼の一つも聞けない事は想定しておりましたとも! こうなったら、意地でもこの男について行ってこの問題を解決させてやる!! 私は男の後を追いかけて、軋む戸を勢いよく閉めた。
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