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最初に案内したのはあの雨の夜、初めて青傘の女を見た場所。
そこはバス停どころか店も何も無い、車が一台通るのがやっとの道の脇で、丁度緩やかな坂の途中である。
私はいつもこの坂を登って自宅へ帰るのだが、あの日から気味が悪くなり通る事をやめてしまった。
今日はまだ日が高いとはいえ、やはりあの日ぶりと思うと足が震える。
「えっと・・・この辺りに立ってたんです。こう・・・何か生気が感じられない感じで、笑っているような――もしかしたら呪っていたのかも!!昔この道でひき逃げされた女性の魂が」
「少し黙れ、聞いた事だけ答えればいい」
そういう男は坂の下に立って眺めるばかりで何を調べるでもない。
これなら来た意味がないじゃないか。
何だか自分だけやる気を出すのが馬鹿馬鹿しくなり私も男の方へ坂を下ると、男は細く古びた街頭の周りを眺めていた。
「この街灯は灯っていたか?」
そういえばどうだっただろう・・・
そんな事気にもした事がないし、聞かれるまで存在も知らなかった。
「どうだろう・・・でも青傘の女が暗く見えたし、ついてなかったんじゃないかな?」
「――あぁ、だがあくまで可能性の話だ。決め付けるのは危険だ」
確かにそうだ。
私の記憶はあやふやな所が多いのかもしれない・・・もしかしたら全部気の所為――
「次だ」
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