事故物件

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「この店は、あのころと全然変わってないね。安心したよ。世の中、変わるべきものと変わるべきでないものがある。ぜひ、こういう店は守っていってほしいものだ」と小西が店を一通り見回して言った。 「あの、いかがしましょう。ソフトドリンクでよろしいですか?」 「いや、軽いものを。黒ビール、一杯だけいただこうか」 「かしこまりました」 「医者が一滴も飲むなというんだけど、まったく飲まないとかえって調子が悪いような気がするんだ。で、たまに、週に一回くらいだけ、ビールをコンビニで買って、少し飲むようにしている。もちろん、ガンマ何とかという数値を見れば一目瞭然らしいから医者にはバレてるのだろうが、カミさんには内緒だ」  言い訳のようにそう言う小西に、まるで少年のような印象すら覚える。この男がまさか昔は暴力団員だったと信じる人はいないだろう。こんな時間にここにやってきたのは、その「カミさん」の目を忍び足でかいくぐってやって来たのだろう、と垣田は邪推した。  一通り、会わなかったころのことや世間話をしてしまったあと、小西が、
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