〇〇差別

1/70
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
差別とは、所詮は受け入れがたい他人の「好み」にほかならない。ある家の主人は醜い召使いより美しい召使いを好み、別の家の主人は黒人の召使いより白人の召使いを好むとしよう。しかし両者の違いはといえば、前者は容認できる好みだが後者は容認できない好みだということだけである。(ミルトン・フリードマン) ***  高松新司、26歳。某地方都市の市役所勤務。出身地は東京。  高校生のころから折口信夫の民俗学に取りつかれ、民俗学のフィールドワークができる地方の国立大学文学部に進学した。大学では、農村部の公民館の協力を仰いで、10月に執り行われるこの地域独特の収穫祭の研究をした。  卒業後は東京の両親のもとに帰ることも考えてはいたのだが、地方の県庁所在地という、都会と田舎の良い所も悪い所も併せ持つ地域で学生生活を送るうちに、第二の故郷とでも呼ぶべき愛着を感じるようになったため、地方公務員試験を受験し、役所勤務を希望した。  受験日前日、市のはずれにある道真公をご祭神とした天満宮に試験合格を祈願したのが功を奏したのかどうかはわからないが、とにかく無事に合格し、志望通りの職を得ることができた。
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!