〇〇差別

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 それを聞いて、新司はこの案はうまくまとまりそうだと確信した。東日本酸素工業の工場がここにできれば、市におよそ最低でも500人規模での雇用が生まれることになる。波及効果まで入れると、製造業の不振により停滞していた市内の景気に相当なインパクトを生じることは間違いない。  気が早いが、新司はすでに一仕事を終えたような気分になっていた。  その日の晩、新司は婚約者の佐藤明美の実家におじゃまをしていた。  リビングのソファに明美と並んで座り、もうすっかり顔なじみになった明美の両親と、晩御飯をごちそうになりながら日本酒の熱燗をいただいていた。  新司がやってくる日を選んでそうなってるのだろうが、出される食事は毎度非常に豪華なもので、恐縮してしまう。 「最近、仕事はどうだい?」と明美の父がおちょこに入った日本酒を飲んで、新司に尋ねた。 「ええ、特に変わりはないんですが……。今日の昼にはちょっと市内に工場建設を予定してる企業さんの接待をしてまして、なかなかいい感じで話が進みそうなんですよ」 「ほほう。いまどき国内に拠点を設ける製造業はめずらしいな。どこの会社だね?」
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