12人が本棚に入れています
本棚に追加
「申し訳ございません。それは現時点では公表できないことになってます」
明美の父は、少し驚いたような顔をしたが、
「ああ、そりゃそうだね。もっともだ。もし競合相手にでも知られたら、大変だからね」と納得した様子だった。「でも、市内のどこらへんに工場を建設する予定なのかくらいは教えてよ。それくらいは、いいだろう?」
「ええ。新港の隣です」
「へえ。あそこ、埋め立ててずっと塩漬けになってたけど、とうとう入る企業が来るのか。そりゃすごい。ということは、かなり大きな名の知れたところなんだろうね」
「はい。おっしゃる通りです」
明美が手を拍手するように叩きながら、
「すごいじゃない。正式に決まったら、教えてよね」と言った。
明美の母は専業主婦で、父は市内にある医療機器販売の会社で営業職として働いている。明美は一人っ子できょうだいはいないため、来年の6月以降は義父母となるふたりは、新司を実の息子のようにかわいがってくれる。
最初のコメントを投稿しよう!