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明美の家で呑んだ酒が顔をまだほてらせていて、夜の冷気が気持ちいい。
「さあて、風呂に入って寝るかあ」
家の鍵を取り出そうとバッグの底のほうに手を突っ込んでいると、胸ポケットに入れていたスマホがメッセージの着信を知らせる音を立てた。
鍵を探すのをいったん中断し、スマホを取り出す。メッセージには、
「さっきの、アレ何よ」それだけ書いてあった。
「アレって?」と返事をする。
メッセージのやりとりが始まった。
「うちのお父さん、めちゃくちゃ怒ってたわよ。私も横で聞いててハラハラしちゃったわ」
「ん? なに? 何か悪いことした?」
「悪いことって……、悪いに決まってるじゃない。あんなこと、思ってても口に出しちゃダメでしょ。しかも、婚約者の父に対して」
「ごめん、いまいち何を言ってるかわからないんだけど」
「……とぼけてる?」
「は? いや、すまない。何を言ってるかわらない。なんか失礼な態度があったなら謝るから、教えてほしい」
「本気で言ってるの?」
「うん」
そこまで送信した後、新司は返事が来るのを、そのまま道端に立ったまま待っていたが、5分経過しても返事がなかった。
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