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現在は、役所の経済労働部産業振興課という部署で働いている。市内で会社経営をしている人に公的な制度融資を案内したり、都会のアンテナショップへ農産品の出品を農協へ依頼したりと、忙しいがやりがいのある仕事をこなしている。
グレーのスーツを着込んで、短髪のヘアースタイル。身長は172センチで体重は65キロ。婚約者の彼女とは来年あたり結婚式を挙げる予定だ。
平凡ではあるが、充実した日々をすごす平和なひとりの青年だった。少し前までは。
理不尽も極まったような話なのだが、新司はある日を境に、差別主義者ということになってしまった。自分の言動によって差別された人を傷つけたというなら、反省しようもあろうし責任の取りようもあろうが、まったく身に覚えのないことで糾弾されるようになった。
とにかく、周囲の人間が言うには、新司は○○差別をしているらしい。
「なんとか差別」という単語を具体的に並べてみると、「人種差別」や「女性差別」や「職業差別」あるいは「性的指向差別」など、差別、という文字の前に人の属性とでもいうべきものが入ることが多いが、そもそも、○○ってなんだ。
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