〇〇差別

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 仕方ないので、スマホをスーツのポケットに突っ込むと、バッグから鍵を取り出して、アパートに入った。靴を脱ぎ明かりをつけて、スーツをハンガーに掛け、とりあえず服を脱いでパンツとシャツだけの姿になると、スマホを持ってベッドの上に座り込んだ。  明美はいったい、何を言ってるのだろう。佐藤家にお邪魔しているあいだ、何か失礼な言動をしてしまったのだろうか。いつものように、ごはんとお酒をいただいて、多少気を使いながらも談笑しただけ。何度首をかしげても、義父となるべき人の機嫌を損ねるような要素は見当たらない。  返事がなかなか来ないので、風呂に入ろうかとカッターシャツのボタンを外していると、ようやくスマホの音が鳴った。  とりあえずシャツを脱いでスマホを開くと、 「あなたずっと、○○差別みたいなこと言ってたでしょ。何考えてるのよ。お父さんもう、カンカンよ」と明美のメッセージがあった。  それを見ると、新司は苦り切ったように顔にしわを作って、ディスプレイを凝視した。
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