〇〇差別

3/70
12人が本棚に入れています
本棚に追加
/70ページ
 最初に新司が○○差別者だと言われたのは、仕事が終わった後に、大学時代から付き合いがあり同じく役所に就職した後輩、北村正樹となじみの居酒屋に呑みに行ったときのことだった。ちなみに正樹は、市民サービス課という、住民票の発行をする窓口と、社会福祉協議会と連携して地域の福祉を担当する部署に在籍しているので、ふだんは役所内で会うことはあまりない。  平日の夕方ということもあり、居酒屋は客席もまばらだった。正樹は後輩とカウンター席に並んすわり、とりあえずビールと刺身の盛り合わせ二人前から始めることにした。 「かんぱい」  仕事終わりのビールは腹に染みる。  しばらく互いの近況などを報告しあった後に、 「先輩。最近、どうですか?」と正樹が言ってきた。 「どうって、まあ特には変わりはないんだが。……あ、そうだ。湾岸地区の市有地があるの、知ってるだろ?」 「新港のすぐそばのですか? 埋め立てしたはいいものの、ずっと空き地になってるっていう」 「そう。まだ取っ掛かりなんだが、もしかしたら、あそこに工場を誘致できるかもしれない」 「おお、すごいじゃないですか」
/70ページ

最初のコメントを投稿しよう!