〇〇差別

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 思わず絶句する。あまりに後輩の視線が鋭いため、まるで自分が批難されるべき何かをやってしまったのだろうかとひるんでしまった。 「な、なんだ? なんだよ」 「いえ……。だから、そういう発言はあんまり良くないです。先輩にこんなことを言うのは失礼かもしれませんが。○○差別と誤解されますよ」 「○○差別……?」  新司はそんな単語はこれまで生きてきて一度も耳にしたことはなかった。差別に関しては小学校の道徳の授業でさんざん言われてきたし、役所に勤め始めたころの研修で、本籍地あるいは国籍などの個人情報は極めて慎重に扱うべしと耳にタコができるほど聞かされた。  正樹はいったい、何に対して怒りを表明しているのだろう。 「そうです。まあ……相手が僕だからいいものの、あまりそういうことはよそでは言わないほうがいいですよ」  正樹は冗談を言ってるようではないようだ。
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