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一通り資料に目を通した後、とりあえず現地を見てみたいということなので、新司が市の車を運転して案内することになった。
新港に通じる片側三車線の広い道路は、対向車線を大型のトラックがまばらに通り過ぎていく。
「率直に申しますと、ほかにも2、3の候補地を検討しているんですよ」専務は新司を値踏みするように言った。
「ええ、存じております。しかしご案内する土地は、国道にも近く大型船も接岸できる港もありますので、かなり利便性の高い工業用地となっておりますので」
「ほかに、そこの土地を欲しいって企業はあるの?」
「いえ、現在のところそういうお話はいただいておりません」
「そう」
到着した。
車を降りると、小学校の運動場のように造成された広い土地が目の前に広がっていて、遠くには貨物船から荷物を下ろすクレーンが緩慢に動いていた。空は若干曇っていて、湿気を帯びた潮風が弱く頬の横を左右に通り過ぎていく。
東日本酸素工業の三人は、それぞれ首を左右に振って当たりを眺めた。
「意外と、広いですね。こりゃいい土地だ。どれくらいでしたっけ?」
「およそ5200坪です」
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