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この匂いを嗅ぐのは久し振りだ。懐かしく思っちゃうのはやっぱり長く来ていなかったからだろう。
生まれる前からお向かいさんで、小っちゃな頃は毎日の様に遊びに来た幼馴染の部屋。
聡ちゃんは私の一つ下で誕生日が一日早い。だから子供の頃は一緒の日にお祝いをしたものだった。それが二人で足並み揃えて大きくなってゆく様で嬉しかったりもした。
残念ながら私が一足先に二十歳になってしまったのだけれど、今日ようやく聡ちゃんも追いついた。
友達を呼ぼうとしない聡ちゃんのささやかな誕生会に私は今年も押し掛けて、大いにお祝いしたらやっぱり彼は悪い事でもした様に気まずそうにしていた。
昔からそういう子だった。人に気を遣わせたり、迷惑かけたり、そういう事を極度に嫌う子だった。他人がしたくてしている事でも勝手に迷惑をかけていると思い込んでしまう所があった。
私にだけは心を開いてくれていたのにいつの頃からかこうなってしまっていた。
しばらく避けて来たけれど、思う所もあって部屋を見せてよと言ってみたら聡ちゃんは驚いた顔をしていたけど、それでもこうして入れてくれた。
「変わってないなぁこの部屋。なのになんか不思議、聡ちゃんが今日で二十歳になったとはね」
グラビアやらアニメキャラがいっぱいだったらどうしようかとドキドキしていたけど、聡ちゃんの部屋は昔通りだった。
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