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聡ちゃんは、自分をぐずでのろまで不器用だと言う。本当にそう。
人よりやる事が遅くて、何をするにもすんなり行かなくて、他人に調子を合わせる事も出来ない。昔の友達は彼の事を陰キャとか、冴えない奴とか言う。
実際、今小さなテーブルを挟んで対面に座る聡ちゃんはちょっと弱気な感じで頼りなさが垣間見える。これはきっと私のせいだ。
思い出に残る最初の聡ちゃんはまだ私が幼稚園に通っていた頃。
お庭で遊ぶ時間に男の子たちが砂場を掘って細かい砂を撒いて大きなアリジゴクを作っていた。そこに捕まえて来た虫を放り込むのが当時のトレンドだった。
出られずに足掻く虫たちを見て歓声を上げる男の子の輪から外れた所に聡ちゃんはいた。
チャイムが鳴って教室に戻る時になると聡ちゃんは男の子たちの居なくなった砂場に走って、シャベルで虫たちを逃がしていた。組が違ったからわからないけどきっと毎日すぐ戻らない事で叱られていただろう。変わってるなと私は思った。
そして私にとって印象的な事はそれから数日後だった。
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