49人が本棚に入れています
本棚に追加
お父さんは、息子たちと長く一緒に暮らせていなかったからと言って、高校時代の先輩のことを次から次へと聞いてきてくれる。
私が知っているのは、先輩が二年生になってからの二年間だけだから。
キャプテンになったあと、どんどん成長していったこととか、選手権の予選のこととか…私は質問に答え続けて、先輩のことを語り続けて…あっという間にうちまで送り返してもらった。
話べたな私だけど、お父さんがうまく合いの手を入れてくれるから、調子に乗ってしゃべり続けてしまった。
そして先輩のことなら、何時間でも語れるかもしれないと思う。
うちの前で車を止めてくれて、お礼を言いあっていたら、お母さんが出てきてくれた。
もう少しで着く…っていうタイミングで、メールを入れておいたの。
お母さんも、一度先輩のお父さんにご挨拶したいって、ずっと言ってたし。今日も送ってきてもらったんだから、いい機会だと思って。
大人の挨拶をして、『今後ともよろしく』みたいなことを言い合って。
きっとこれで、先輩の怪我関連のことは全部完全に解決、かな。
あ、あとは野田さんたちに会って、そちらも水に流してきて、完了だ。
そうか。
お母さんも大人として、そうした方がいいと思ってくれているから、私たちが九州まで行ってくることを認めてくれたのかな。
車に手を振ってから、お母さんと二人で部屋に戻った。
…今度こそ本当に、しばらく会えなくなる。
でも、きっと大丈夫。
私は、私のやるべきことを一生懸命にやればいい。
あの人は、私がそうしていることを見守ってくれる。ほめてくれる。
あの人に恥じない生き方をしたい。
私は心からそう思って、一日一日を丁寧に過ごしていった。
最初のコメントを投稿しよう!