エピローグ

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気持ちだけをいうなら、隣には北見にいてほしいし…ベンチには結花にいてほしい。でも、もう幸せな時間は終わってしまったから。 次の時間を、またイチから作っていくしかない。 大丈夫。 また新しい仲間がきっとできる。 俺がグランドに近づいていくと、多分水野さんだろう人が気づいてくれて大きく手を振ってる。 「お~い、澤田君! 待ってたよ!」 俺の、仲間たちだ。 革靴でグランドに入るのを躊躇した俺は、ちょっと待ってと手で合図をしておいて、その場でトレーニングシューズに履き替えた。 スーツだから動きにくいけど、いつもの習慣でグランドに向かって頭を下げてから、軽く走ってその輪に加わる。 「新入生の澤田凌太郎です! 入部希望です。よろしくお願いします!」 頭を下げると、拍手喝さいで迎えてくれた。 進学すると、最上級生から最下級生に逆戻りする。 別にそれで態度が大きく変わるわけでもないんだけど、気持ちの面では結構違う。俺はもともとわがままの甘ったれだから、本当はこういうふうに1年生として先輩に囲まれてるのが好きなんだよな。 やれと言われれば、キャプテンを演じるくらいのことはできるけど。 常に上級生モードは疲れる。 結花がいてくれたから、俺の一番幸せな時間は高二から高三にかけてだったけど、それを外して考えるなら一番楽だったのは高一の一年間だ。 とりあえず着替えて来いと言われ、部室に連行される。どうでもいいけど、入学式の後に練習に参加すると、当然のように思われている。 まぁそのつもりで用意してきてる俺も俺なんだけど。
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