怒涛の日々

1/12
19人が本棚に入れています
本棚に追加
/224ページ

怒涛の日々

兄ちゃんが先輩を拉致って返り討ちにあった翌日、私は先輩の入学手続きに付き合って千葉まで小旅行に行ってきた。 「結花」って呼んでくれるようになった代わりに、もう「先輩」と呼ぶなと要求されて…なんとなく若菜さんをまねて「凌」と呼んでみたら、すごくうれしそうにされた。 …こういうところだよね。 大型犬に甘えてすり寄られたような、優越感というか満足感というか…求められてうれしい。抱きしめて、撫でまわしてあげたくなる。 明るい雰囲気のサッカー部の先輩に勧誘されて入部を約束してたけど、今日のところはさすがに練習参加はお断りしてくれた。 やっぱり、高校サッカーを追っかけてる人にとっては…先輩は有名人だ。 公式戦の試合中に大きな怪我をして、復帰して引退したことが感動物語みたいに語られていたせいもある。 私と美玖ちゃんがユニフォームを交換してたのも中継されていたみたいで、野田さんと先輩の友情秘話になってしまった。 先輩はそういうのを嫌うから…取材の依頼も一切受けなかったし、ノーコメントで通したみたいだけど。 大学リーグの強豪というわけではないから、この先はあんまり騒がれずにサッカーを楽しめるのかな。そうだといいな。 慎太郎さんがいくつか見繕ってくれた候補を回って、住む家もあっさり決まった。お昼ご飯を食べたら、ようやく初デート開始…なのかな。 でももう正午も大きく回ってる。 いいの。今日は先輩の用事を済ませるための一日。 今までだったら、この場に私が同行することはなかった。でも、これからは『一緒に来て』って誘ってもらえる。その立場を手に入れることができたことが、とてもうれしい。
/224ページ

最初のコメントを投稿しよう!