神様ReLIFE

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目を開けると、そこは天界の神様の部屋。 姿はまだ人間のままのため、これから変わることになるのだろうか。 「神様。 ただいま戻りました」 「あぁ、おかえり。 地上はどうじゃった?」 「とても楽しかったです。 家族に会ってきました」 「そうか」 「新しい子供もできていました。 僕の弟のようです」 「・・・そうか」 少し寂しそうな目をしている神様に尋ねてみた。 地上へ降りて、ある確信を持っていたからだ。 「・・・神様。 もしかして神様の名前って、僕と同じ“エイト”だったりしますか?」 そう言うと、神様は目を見開いた。 「ッ・・・! あぁ、そうじゃ。 よくぞエイト、ここまで辿り着いたの。 どうしてワシの名前がエイトだと、分かったんじゃ?」 ポケットに入っていたメモを取り出し、広げて見せる。 「このメモです。 きっと神様がズボンのポケットに入れたんだろうなって、思いました。 神様が、単に僕のプロフィールを書いて、渡すはずがないと考えたから。 エイミという文字も謎だったし」 「流石じゃの」 「つまり僕は、神様の生まれ変わりの生まれ変わりの生まれ変わりの生まれ変わりの生まれ変わり、の・・・? あれ? 神様、今いくつですか?」 「ほっほ。 ワシは今106歳じゃ」 「凄い。 僕の大先輩ですね!」 「・・・ならエイト。 今からワシが言う言葉、もう分かっておるじゃろう。 君、大きくなったら神様になる気はないか? もちろん、生まれ変わりが皆神様になるわけではない。   強制はしないから、エイトの答えを聞かせてくれぬか?」 その言葉に、エイトは迷うことなく即答した。 「はい。 神様に、なりたいです」 「本当か?」 その念押しに力強く頷いてみせる。 「だって僕、どうして神様の生まれ変わりとして産まれたのか、その理由が分かりましたから」 「何だと思う?」 「神様の存在を、信じていないから。 だから無駄な干渉はせず、皆平等に見守ることができる」 エイトの回答を聞き、神様であるエイトは満足気に笑った。 「あぁ、その通りじゃ」 「変な感じもしますが、僕の魂が男ならエイト。 女として生まれたらエイミ。 そういうことなんですね。 僕の生まれ変わりは、10年置きにこの天国へやってきます。 ということは、今の神様は・・・」 「ワシはもうすぐ、神の役を降りる。 それだけじゃ」 「え、じゃあ神様は、これからどうするんですか?」 「初めて会った時に言ったこと、憶えておるか? ワシは神様から降りたら、普通の人間に戻る」 そう言われ、10年前のことを思い返す。 「あ・・・。 特別な人間上がりの天使の場合のみ、歳は地上と同様のペースで取っていく」 「そう。 その天使というのは、実は神様も含まれておるのじゃ。 ここにいる死んだ人間は、もう歳を取らない。 ワシは普通の爺さんとして、この世界を楽しむことにするよ」 「やっぱり、神様には魔法の力があるんですね」 「何度も言うが、それは我々が特別な存在だからじゃ」 なるほどと思いつつ、一つ気になる点を伺ってみた。 「僕が天使として普通に働けるのは、20歳までですよね? それ以上歳を取ったら、流石に周りに変に思われるんじゃ・・・」 「ちゃんと対処はしてある。 20歳になったら、次の神様に尋ねるといい。 働く次の場所まで案内してくれるだろう」 「働く、次の場所・・・?」 「あぁ。 そこは特別なところでね。 容姿は全く違うが、エイトとエイミがたくさんいるところじゃ。 君が亡くなる直前、エイトと名乗る16歳の青年が病室に尋ねてきたじゃろ?」 「はい」 「その彼は、今言った特別な場所で働いている。 また会うことができると思うぞ」 「ッ、本当ですか!?」 「その特別な場所というのは、家族が分からなかったり家族に会いたくないという子供を預かっている施設じゃ。 小さ過ぎる子供が多いから、我々が歳を取ったところで何も言ってこない。  エイトは20歳になったらそこへ行き、大人になり、神様になる勉強をして、96歳になったら本当の神様になるのじゃ。 分かったな?」 そこにはもしかしたら、自分が案内した子供がいる可能性がある。 「はい!」 「最後に聞くが、後悔はしていないのか? 今すぐに天使を止めたら、君はもう歳を取らなくなるんだぞ。 若いままでいられる。 それでもいいと言うのか?」 「もちろんです。 天使になって、神様を絶対に受け継いでみせます!」 神様と別れたエイトは、今の自分を全うするため仕事へと戻った。 その途中、見覚えのある一人の少女と出会う。 彼女の名はエイミ。 先程出会った姿で、そこに立っていた。  新規で死んだ人間が最初に訪れる場所だ。 ―――・・・もう、亡くなっちゃったんだね。 彼女に声をかけようか迷ったが、結局はかけないことにした。 先程地上で見た青年がこの天界にいるとなったら、彼女はきっと混乱するだろう。 おそらくエイトが6歳で亡くなり初めてこの天界へ来た時に、あの16歳のエイトがいなかったのも同じ理由だ。 ぼんやりと彼女のことを見届けていると、アランがやってきた。 「エイトじゃん。 随分と話が長かったな。 神様と、何の話をしていたんだ?」 「ん? 秘密」 「何だよそれ」 自分が元々人間で、しかも神様だった。 そのようなことを言えるわけがない。 アランは純正の天使であり、もちろん年を取らない。  そのため、いずれは自分の下で働いてもらうことになるなら少し楽しいと思った。 「それよりさ、アラン。 神様って本当に、願いを叶える力があるのかもしれないね」 「どうしたんだ? 急に。 さっきまで、あんなに否定していたじゃないか」 エイトは小さく笑った。 地上へ行き、色々と知り、精神的にも成長した気がする。 「まぁ、僕も大人になったっていうことだよ」 「・・・何か、今日のエイトはいつにも増して変だな」 「失礼なッ! それより、アランはもう休憩? よかったら、一緒に天界を歩き回ってみようよ」 「いいけど、いつもみたいに泉を覗き込まないのか?」 「うん、もういいんだ。 全てが終わったから」 「・・・?」 そう言って、エイトはアランよりも先に歩き出す。 いつかは違う景色が見えるかもしれない。 今日も、天界は平和だった。                                                                   -END-
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