(一)

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 彼女の通う高校のクラスメイト。超お嬢さま学校でありながら、その友人のエピソードは、聞く限り、上流階級の子女を感じさせない。 「話したでしょ? あの彼」  私の服の乱れを直しながらいう彼女は、私を子どものように扱う。本来は同じような歳なのだが……まあ構わない。  あの彼。―――グループ交際をしている男子校の生徒のひとり。向うも御曹司が集う学校ということで、その彼は二枚目のぼんぼんだといっていたか。  外界からもたらされる情報は彼女からのみ。だから彼女の話の記憶は事細かく脳裏にある。  ゆえに、今日あの星がやってくるのも、以前の彼女の問わず語りから得ており、その正確な時間も、しっかり頭に刻み込まれていた。 「わたしのようなルックスだったらよかったのにって、さんざん愚痴られちゃった」  困ったような顔つきで、「そんなことないわよね~」と語りかける彼女に、 “ほとんどの女子はそう考えると思うわ”  と微笑んだ。自分の表情に変化はないとわかってはいたが。  さらに、  絶対彼はあなたのことが好きなんだ。悔しいから、彼から告白されても絶対受けないでね。女の友情は守ってね―――。  とも、受話器の向うでユッコは重ねたらしい。 「もちろんOKしたわよ。興味ない人だからって。  でも実は―――もう告白されてたのよね~」  困惑から苦笑するような面に変えた彼女の、その話は初耳だったので、 “そうだったの?”  少し驚いて返した。もちろん彼女には届かないが。 「でも、断ったわよ。興味ないのは本当だから」  それからユッコは、うっぷんを晴らしたいから週末買い物につき合って、と誘ってきたという。  うっぷん晴らしが買い物というところに女性らしさを感じ、私は緩まない頬を再び緩和させた。  ユッコの話は、どこそこにお洒落なカフェができた。あのビルに新しいブランドが入った。今盛大に宣伝している映画のただ券があるから観てみない。などと、筋をそらしてゆき―――。 「なんだか結局、遊びの相談だった感じ」  吐息を洩らした彼女はしかし、 「でもそんなふうだったから、ユッコもそれほど本気じゃなかったのかもね」  と、すぐに口角をあげた。 「まあ、男子なんて星の数ほどもいるし……。  あ、そうだ。もうすぐかな……」  ひとりごちた彼女は、立ちあがると、私を元通りソファーに置いた。
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