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彼女の通う高校のクラスメイト。超お嬢さま学校でありながら、その友人のエピソードは、聞く限り、上流階級の子女を感じさせない。
「話したでしょ? あの彼」
私の服の乱れを直しながらいう彼女は、私を子どものように扱う。本来は同じような歳なのだが……まあ構わない。
あの彼。―――グループ交際をしている男子校の生徒のひとり。向うも御曹司が集う学校ということで、その彼は二枚目のぼんぼんだといっていたか。
外界からもたらされる情報は彼女からのみ。だから彼女の話の記憶は事細かく脳裏にある。
ゆえに、今日あの星がやってくるのも、以前の彼女の問わず語りから得ており、その正確な時間も、しっかり頭に刻み込まれていた。
「わたしのようなルックスだったらよかったのにって、さんざん愚痴られちゃった」
困ったような顔つきで、「そんなことないわよね~」と語りかける彼女に、
“ほとんどの女子はそう考えると思うわ”
と微笑んだ。自分の表情に変化はないとわかってはいたが。
さらに、
絶対彼はあなたのことが好きなんだ。悔しいから、彼から告白されても絶対受けないでね。女の友情は守ってね―――。
とも、受話器の向うでユッコは重ねたらしい。
「もちろんOKしたわよ。興味ない人だからって。
でも実は―――もう告白されてたのよね~」
困惑から苦笑するような面に変えた彼女の、その話は初耳だったので、
“そうだったの?”
少し驚いて返した。もちろん彼女には届かないが。
「でも、断ったわよ。興味ないのは本当だから」
それからユッコは、うっぷんを晴らしたいから週末買い物につき合って、と誘ってきたという。
うっぷん晴らしが買い物というところに女性らしさを感じ、私は緩まない頬を再び緩和させた。
ユッコの話は、どこそこにお洒落なカフェができた。あのビルに新しいブランドが入った。今盛大に宣伝している映画のただ券があるから観てみない。などと、筋をそらしてゆき―――。
「なんだか結局、遊びの相談だった感じ」
吐息を洩らした彼女はしかし、
「でもそんなふうだったから、ユッコもそれほど本気じゃなかったのかもね」
と、すぐに口角をあげた。
「まあ、男子なんて星の数ほどもいるし……。
あ、そうだ。もうすぐかな……」
ひとりごちた彼女は、立ちあがると、私を元通りソファーに置いた。
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