(四)

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(四)

     (四) 「……お嬢さま」  久江さんの声で意識が戻った。 「どうなさいました?」  ふり向くと、開いたドアから差し込む廊下の明りを背に、彼女は立っていた。 「具合でも……」 「いえ、あの彗星を眺めているうちに、そのほかの星たちにも見とれちゃって……。こんなにしげしげ眺めるの、久しぶりだったから」 「そうですか……。そういえば今夜でしたわね。七六年に一度とか……」  陰になっている表情が返した。  再び窓外に目を戻すと、いきなり室内に明りが戻った。  瞬時に夜空は消え、私の顔が窓に映る。そして同時に浮かんだのは、壁の調光ダイヤルに手を添えている久江さんの姿。  違和感が走った―――。  彼女が許可なく、部屋のなにかに触れることはない。掃除に入るときだって、朝、一言断りがある。しかも、今私は星を見ているといったのだ。  ガラスに映る彼女はそして、ソファーの上にある人形をじっと見つめているよう……。 「どうしたの?」  再度ふり返り、覗き込むようにして問いかけると、びくっとした彼女は顔をよこした。 「いえ……。お食事のご用意が整いましたので、お早めに。冷めますので」  いうと、伸ばした背筋を私に向けた。
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