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約束〈透視点〉
俺は遠野と一緒に帰る
約束をして居たので
HRが終わると同時に
教室を出た。
遠野には駄箱で
待っててくれと
伝えていた。
俺は、急いで
龍也を探した。
校長の話だって
四時間も五時間も
している訳が無い。
探す場所は校長室。
職員室。
そして、いつもの屋上
の三箇所しか、
龍也の行きそうな
所を知らない。
手っ取り早く
探すには上からだ。
まずは、いつもの
屋上に行ってみた。
誰かに聞かれると
いけないので、苗字で呼ぶ。
「九重先生? 居るか」
二、三分呼んでみたが
返事は無かった。
〈此処には居ないな〉
屋上を後にした。
次に校長室をノックしてみた。
コンコン
「誰かね?」
「一年の新庄と言います
九重先生は?」
いきなり来た
俺に嫌な声を出さずに
答えてくれた
「三十分くらい前に
職員室に帰られたよ」
「有難うございます」
ドア一枚隔てて、
校長に礼を言って
その場を離れた。
俺は職員室に走った。
職員室の前で
ドアを開けようとしたら
タイミング良く
龍也が出てきた。
「あれ? 新庄君
どぉされました?」
分かってる、
分かってるさ
此処が職員室の
前だって事くらい
だけど、その
白々しい言い方は
無いんじゃないか?
俺が一緒に
戻らなかった事を
怒っているんだろ。
岩滝が居なくなった
体育館は
生徒達にとっては
かなり都合のいい場所だ。
俺も遠野と話すのに
ちょうど良かったが
それが、龍也にとっては
面白くなかったらしい。
「少し、
話がしたくて……」
龍也の言い方に
少し、ムカついたから
俺も、ぶっきら棒に
言ってしまった。
「第三会議室に
行きましょう。
あそこなら、
邪魔されずに
話が出来ますから」
旧校舎にある
その教室は
部活以外で
使われる事は殆ど無い。
職員室を出て
二人で、
第三会議室を
目指し歩く。
旧校舎と言うだけあって
床が抜けそうなくらい
ギシギシと
歩く度に音がする。
旧校舎には
第三会議室の
他にも何部屋かある
〈こりゃ、長くなるかな〉
俺はポケットの中で
遠野にメールをした。
「『少し、遅れるから
食堂に居てくれ』」
~送信~
アド交換したのは
当然、体育館でだ
理由は単純。
待ち合わしの時に
便利だからだ。
透、何故あの時
一緒に来て
くれなかったんですか」
「遠野に
呼び止められたから」
といのは単なるこじつけ。
「授業サボってるのに
一緒に行ったら龍也が
咎められるだろ?
本当は、凄く
心配だったけどさ……」
「あいつと
二人っきりなんて
誰だって好きな奴が
盗撮する様な奴と
二人っきりで
心配しない方がおかしい」
それは、誰だって
同じだと思うけど、
さっきは
仕方なかったんだ!!
キレ気味の龍也に
俺がキレてしまった。
だってそぉだろ?
咎められるのは
明らかに
龍也なんだから。
「話はそれだけか?
俺、この後
約束があるんだけど」
「誰とですか?」
そうくるよな。
「遠野」
嘘をついても意味がない。
「恋人になる
私より遠野君の方が
大事ですか?」
さっきまで
怒ってた龍也が
今度は泣きそうな
声で訊いて来た。
俺は多分、
龍也の泣き顔や
涙に弱い……
此処は第三会議室
俺は泣きそうな
龍也にキスをした。
誰も来ないし
誰も見て無い
まさに、好都合だ。
「龍也、ゴメンな
これで許してくれ……」
何も言わない龍也。
沈黙が続く……
お互い口を
開こうとしない。
妙な冷や汗が
流れる中、
沈黙を破ったのは龍也だった。
「何故、キスしたのですか?」
解ってて訊いてるな。
「好きだからに
決まってるだろう」
「着い行って
やれなかったのは
しょうがないだろ……
どぉしたら
許してくれるんだ?」
年上だからか、
惚れた弱みか…
「遠野君との約束を
後日にして下さるなら
許してあげますよ。
どぉします?」
龍也の目が笑ってない……
口元だけで
笑ってる不適な笑み。
「分かった、今此処で
電話していいか?」
「構いませんよ。
私しか居ませんから」
携帯をポッケから
取り出し遠野に
電話を掛けた。
「もしもし、遠野?」
「新庄、
なにしてんだよ早く来いって」
「悪いんだけどさ、
今日行けなくなった」
「はぁ!? なんだそれ」
普通はそう思うよな。
「ちょっと
急用が出来たんだ。
さっき、母さんから
電話があって
早く帰って来いって
言われちゃってさ」
遠野は家の
家庭環境を知らないから
バレないだろう。
「分かった。
家の用事じゃ仕方ないな。
その代わり、
明日何か奢れよ」
「分かった。
正し、千円以内な」
「おぅ」
「じゃぁ、おれ
帰るからまた明日な」
電話を切って
龍也の方を向く。
「これで良いか」
「えぇ、
有難うございます」
龍也は満足そぉな
顔をしていた。
一生、龍也に
勝てない様な気がした……
いや、好きな奴に
あんな事言われて
断る奴が居るなら
是非とも会ってみたい。
まず居ないだろうけどな。
「透、一緒に帰りましょう」
嬉しそうだ。
「龍也の車で
送ってくれるのか?」
もう少し、一緒に
居たくて言ってみた。
「良いですよ」
龍也の笑顔は
ある意味(俺限定で)
反則だ//////
年上のくせにカワイイ……
「そぉだな」
あくまでも平静を装って
返事をした。
家の前まで
送ってもらった。
「送ってくれて有難うな」
抱きしめるのは我慢した。
「これくらい良いんですよ」
だから、それは反則だ。
「なぁ、龍也、
付き合うのは
夏休み明けで
良いんだけどさ、
もしその龍也が
迷惑じゃなかったら
学校まで会いに
行っても良いか?」
「私は、嬉しいですけど
折角の夏休みなのに
態々良いんですか?」
「あぁ
じゃぁ、夏休みは
そぉいう事で
じゃぁな、また明日」
「はい、また明日」
「気をつけて帰れよ」
心配だ。
「車ですから、
大丈夫ですよ」
「こっちが気をつけてても
信号無視してくる奴とか
後ろからぶつかってくる
奴とか飲酒運転とか
色々あるから
用心して帰れってこと」
どんな馬鹿が
居るかわかったもんじゃない。
「ご忠告
有難うございます。
じゃぁ、おやすみなさい」
「おやすみ」
透の車が
見えなくなったのを
確認して家に入った。
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