千里の道も一歩から

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「3番線に、列車がまいります。黄色い線までお下がりください。」 耳に慣れた駅アナウンスが流れた。 少しして、駅のホームに電車が滑り込んでくる。 いつもと同じ景色。 この瞬間足元がそわっとする。 プシュー ガタン 音がしてドアが開く。 まだ朝方の今、降りる人は一人もいない。 いつもと同じ号車に乗り込んで、静かに席に座る。少しして電車が出発した。 窓の外を眺める。 毎日毎日幾度となく見てきた景色。 でも、毎日同じではない。 晴れの日。雨の日。曇りの日。 雲一つ無い青。筆を滑らせたような雲。 ペンキをぶちまけたような灰色。 今日の空は水で薄めたような青が広がり、薄く雲がかかっている。視線を下にずらすと朝日がさし、建物がキラキラと光を反射していた。 まぶしい世界に目を細め、心の中で思う。 あと、5分。
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