千里の道も一歩から

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名も知らぬあの人を、待っている。 始まりは2カ月前。 高校に行くのも慣れて、乗る号車を決めたとき。 あの人が現れた。 キキーッ 耳をつんざくブレーキ音がして、ガタンと電車が揺れた。 電車のドアが開く。 何気なく私は目を向けた。 そこで。 朝日に照らされた髪がさらっと揺れてきらめいた。 その瞬間心が大きく揺れた。 スラッと伸びた足。細くてしなやかな指。その肌は白い。 そして、何よりも。何よりも。 その、髪。 茶色の混じった黒髪が、朝日に照らされたその瞬間だけ、きらめく。 目を、奪われる。 その人は、私の前を通り過ぎ向かいの席の向こうの端に座った。 その人が、座ってふっとその目をこちらに向けるまで私はその人から目をはなさなかった。…いや、はなせなかった。 恋。たった一度だけでそんな深い穴のようなものに落ちてしまったのだろうか。 分からない。 ただ、見ていられれば良くて。 会えるだけでうれしくて。 知りたい。 知りたい。 もっともっと。 そんな風に思っている。
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