千里の道も一歩から

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あと、3駅。 あと、2駅。 あと、1駅。 心の中で、数えている。 毎日。毎日。毎日。 君に会えることだけを、考えている。 ――今日は、挨拶、できるかな。 ドクドクドクドク 鳴っている。 震えている。 手が。足が。心が。 君に会って挨拶をしようと思うだけで。 全身が震えて震えて止まらない。 電車がスピードを落とす。 ブレーキ音がして電車が止まった。 暫くして駅特有の音とともにドアが開く。 一人、また一人、と人が電車に乗り込む。 ――今日は遅いな…。 君の姿を探し続ける。 ハッ 目の前がきらめいた。 ドクッ 突然胸が高鳴りだす。 ドクッ ドクッ ドクッ ドクッ 待ちわびた君の姿が、そこにある。 朝日が射し込み、その髪がきらめき、君しか見えなくなる。 「……っ。」 君が私の前を通り過ぎていく。 その目はずっと前を見ていて私のほうなど見向きもしない。 ――おはようございます…。 って、 …無理、だなぁ。 悲しいほどに。 弱虫だ。
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