千里の道も一歩から

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「おはよう。今日も言えなかった…。」 幾分か震えのおさまった手でスマホに打ち込む。 親友への報告だ。 何回同じことを打ってきただろう。 ――でも、仕方ないんだよ。 「でも今日は髪きっらきらだったよ~✨」 一文追加して、送信する。 アプリを閉じて、電源ボタンを押す。 当たり前だけど、画面が真っ暗になる。 その画面を見るように少しうつむいて、向かいの端のあの子にちらっと目を向ける。 スラッと伸びる足を膝で90度に曲げている。視線を少し上げると、いつもどおり重そうなリュックを自分の脇に抱え、手元のスマホ画面を見ていた。 ――あと5分。 君といられるのは、あと5分。 ときどきカーテンの隙間から射し込む日の光が君の髪をきらめかす。 ――すき。 心の中にポンと出てくる言葉を、意識して、意識しないように。 ――君がすき。 あふれてしまいそうになる。 ただ見つめているだけで、口からぽろっと 言葉が(こぼ)れそうだ。
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