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・・・
君が、そこにいる。
その視線は先程リュックが倒れた男子にそそがれていた。
じっと見つめて、何かを見極めているようだった。
君の足が少し動く。止まる。口に手を当てる。
しばらくそうして固まって、動いた。
先程リュックが倒れた男子の肩をポンとたたく。
その男子は驚いたように顔を上げ、君を見る。
「………。」「………。」
君は何か言おうとして、ためらっているようだったが、その顔には笑みが浮かんでいる。
リュックが倒れた男子は、一瞬怪訝な顔をし、すぐにハッとした顔になった。
それを見て君が笑う。そして口を開く。
「久しぶり。」
耳に響いたその声は、高くも低くもなく、私の心に直接響く「君」の声だった。
「えっ。ハルヒっ?え、センリハルヒ?久しぶりっ、え、なんで?」
君に話しかけられた男子があわててスマホをしまいながら答える。
「お前こそ、なんでだよ。いつもこの電車にいた?」
「いや、今日いつもより一本早い。いやでも、ハルヒいるならこれからこの電車乗ろうかなぁ。」
「ははっ」
2人の間で(電車の中なので2人とも小声だが)たくさんの言葉が飛び交う。
「高校どこだっけ?」「○○」「あーそうそう!」「かずきは××だよな。」「せーかい!あ、部活何入った?」「結構迷ったんだけどー…」
次から次に入ってくる情報。情報。情報。
頭にしまって反復する。
高校は○○、部活は天文部、名前が…ハルヒ。
一言も逃すまいと全神経を耳に集中させる。
「あ、ハルヒ、彼女できた?」「うっわ直球~。いねぇよ。」「はっはっはっ そんなんじゃ好きな人もいねーんだろーな。」「なんだよ、お前はいんのかよ。」
彼女はいない!彼女はいない!彼女はいない!
そして、おそらく。
好きな人もいない!!
心の中が喜びでバクハツする。
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