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「警備員、居ないのか。不審者の侵入を許すな」
怒声を放つが、彼等が直ぐに来ないと予測は立っていた。
遠く悲鳴が聞こえている為だ。この病院敷地内で好戦的な変異体が暴れているのだろう。
最早、日常茶飯事に成りつつある騒動。
もう何度も聞いた銃声に、侵入した女性が身を竦め表情を強張らせる。
歓声が届いて来る辺り、変異人類種が排除されたのだと理解できた。
じきに警備員はこちらへ回って来て、この目の前の女性を拘束してくれると冷ややかな視線を投げる。
ならば私は、有意義で無駄な話をして足止めするのみ。監視カメラのある場所まで、誘導されていたのだと彼女はまるで気付いていないのだから。
「彼等も人です。どうして話し合いの前に武力で押さえ付けるのです」
「使われているのは麻酔銃だし、話し合いの席に着こうとしないのは奴等だ。あそこまで好戦的に振る舞い、手に入れた能力でもって他人をいたぶる輩が安全な訳が無い」
「それでもっ、彼等にだって心があるのです。人として人らしく生きる権利は当然あるのでしょう。彼等は病人なんです」
この女性が所属する団体名は何だったか。ヒステリックな声に耳を塞ぎたくなるが、努めて平静を装い冷たい言葉を繰り出す。
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