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足音が聞こえ、来たなと思う間もなく特殊警備員が姿を現す。
「教授、離れて下さい」
素早い訓練された身のこなし。一番の若手が女性と私の間に立ち塞がり、二人の男女が両側から女を拘束する。
「部外者の立ち入りは禁止されています」
「貴方達がそうやって苛めるから、彼等は力に頼らざるを得ないのでしょう」
警備員の腕の中で暴れながら叫ぶ声に、既に背を向けていた私はもう一度振り返った。
「この方、星辰会の会員ですね」
視線のかち合った中年警備員が、得意の記憶力から覚えていた女の素性を口にする。
過激派に近い団体だ。
共存を叫び、変異人類種の暴力は許されるべきだとする。仕方がないのだと。
女が今しがた叫んだ様に、苛めた側が悪いのだとして。
「願いを伝え会おう。誰もがこの地上の綺羅星。だったかな。随分と抽象的で綺麗事を並べた御言葉だ」
皮肉しか出ない。変異体は病人として丁寧に扱われた記録があるのに、この女はそこには触れ様としない。
共存を望む者に、次々と匙を投げさせたのは病人のままが良いと理解した連中だ。
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