62人が本棚に入れています
本棚に追加
脚立でムニュ
翌朝、ぐっすりと眠れたようでとてもスッキリと目が覚めた。
きっとなんかストレスとか色々溜まってたのが笑ってきっとスッキリしたんだな。
俺達は美味しく朝飯を食って『レオーネ』に飛んだ。
◇◇◇◇◇
「ねぇメイ、博士が『出来るだけ異世界の人助けてやれ』って言うからさー困ってそうなのないかな」
「うーん、なんか依頼ってみんな困ってそうだわよ」
まぁそれはそうか。クリスさんに聞いてみるか。
俺達今お金はあまり困ってないから解決が難しそうなのやってみようかな。
「クリスさん、なんか解決が難しそうで困ってるような依頼ってありますか?」
「これなんかがそうだけど、もう何年も前からなのよ。相手が悪くてあなた達でも難しいんじゃないかしら」
「メイ、これなんて書いてあるの?」
「難易度:高 悪臭ゴースト 臭くて人が死にます。助けてください。だって」
「これは地元の討伐隊や保安局、国からも行ったけど解決出来なくて、その分の賞金もその機関から出されて重なって解決出来たら金貨50枚になるんだけど、、、」
「すごい額ですね。メイ、俺達で出来るかな?」
「どうかしら、問題の中身がわからないとなんとも言えないけど、アレクと私ならきっと大丈夫よ」
「じゃあクリスさん、これお願いします」
「わかったわ、ちょっと遠くて直ぐには解決出来ないでしょうから、何日か行ける準備が必要よ」
なんか和風温泉旅館の『エギールの館』が自宅みたいになっちゃってるから旅行に行くみたいだw。
「わかりました。場所はどの辺りですか?」
「この前タカサック山に行ってもらったけど、あの山を越えてジョーカーの方に行くとヨッシーって言う町があるのよ。そこの町長さんが元の依頼主ね」
「この辺りですね。わかりました。僕達にお任せください」
「まぁ頼もしいのね。じゃあこれ依頼カード。無理はしなくてもいいけど解決出来たらおごってね♪ 気をつけて行ってらっしゃい♪」
「はいわかりました。ありがとうございます」
「「行って来ます」」
◇◇◇◇◇
取り敢えず俺達はタカサックの街で買い出しに出かけた。
「メイ、よく考えたらゴーストって幽霊だよね」
「そ、そうよ。こ、怖いのじゃないといいわね」
「メイは俺が守ってあげるよ」
「まぁ、アレク頼もしいわね。から手形じゃあなくて、具体的にどうやってゴーストを捕まえるのか私に理論的に説明してくれると安心出来るわ」
「えーとですね、まずゴーストだから、、、・・・。 わからねー! そもそも幽霊なんて捕まえられるの?」
「地球では様々な事例があるわ。箱や瓶に閉じ込めたり、電流の牢屋を作ったり色々ね。もしも私の目に見えるのなら幽霊じゃなくて光学的に何か実態があるはずよね」
「メイに見えなければ俺一人で対処しなくちゃならないのか。しまった、この依頼難しそうだな」
「アレクと私なら大丈夫よ♪」
俺達は蓋が出来る瓶のような小さな壺や鉄の棒と針金のようなものを買った。針金は銅製らしい。
実際『ゴースト』って言う情報だけじゃわからないから後は依頼現場に行ってからかな。
後はこれを俺が背負えるリュックを買って、、、。
「あれ? メイ、荷物は?」
「そんなのもうしまったわよ」
いったいどこにしまったんだ。聞けねー。
◇◇◇◇◇
俺達は温泉旅館に戻り暫く帰っこれないと話した。
丁度ルーミアさんもいて
「まぁ、それは大変じゃない。じゃあうちのナオミを貸し出しましょうね」
「いえ、そんな、大丈夫ですから、、、」
俺はルーミアさんの申し出をようやく断り事なきを得た。
まぁあんまり急ぐ旅でもないからね、俺達はナオミさんに握り飯だけ作ってもらって、ハイキングのようにタカサック山に向かった。
◇◇◇◇◇
「ナオミさん、二人がここから離れられるとちょっと困るわねどうしょうかしら」
「では妹に追わせましょう」
「後手には回りたくないから直接干渉していいわよ」
「わかりました。そうさせます」
◇◇◇◇◇
はあ〜、いい天気だね〜。
「メイ、気持ちいいよね。なんか異世界の方が空気が綺麗なんじゃないかな」
「そうね、どれだけ綺麗なのか数値が知りたい?」
「いや、それは大丈夫です」
もうすぐ頂上付近だ。見晴らしいいなぁ。
「メイ、この辺りでお昼にしようか?」
「うん♪」
俺達は丁度あった倒れた木に腰掛け、ナオミさんの握り飯を広げた。
「はい、メイ」
「ありがとアレク。いつも私に先にくれるのね♪」
まぁ、かあちゃんがそうしろって言うけど、メイなら俺が先にあげたいもんな。
「はいアレク、これスポーツドリンクよ」
えーこんなの作れるの?
ゴクゴク。
上手い。
「メイ、これ日本の市販のより上手いよ」
「私の愛情が入っているからだわ♪」
えへへ。
遠くにタカサックの街が見える。家々が小さく見えるが自然も多そうだ。
日本の荒廃した状況とは随分と違うな。
南を見渡すとこちらも遠くに街が見えた。
握り飯をかじりながら手前を見ると少し小さな町がある。
あの辺りかな。
南西の方角を見るといくつかの煙突から煙が出ていた。
「メイ、なんだろあれ、工場かな?」
「さっきの地図だとアンナックの金属加工工場だわね」
「まあ異世界でも工場くらいは必要かな」
「そうね」
しかし相変わらずナオミさんの握り飯上手いや。
有難い事にみんなの愛情が入ってる分上手いんだな。
◇◇◇◇◇
『ガサッ』
はっ! 何かいる。俺はマイケルに手を伸ばしながらセンサーを音のした方に向けた。
魔獣 ギボアーガ オス
草食系雑食獣 標準種 個体
HP 4
MP 1
DF 3
体高 22cm
体重 2kg
魔法 加速
なんだこいつらは草食系なんだね。マイケルを戻した。
「メイ、魔獣の子供みたいだ。小さそうだよ」
「なら大丈夫ね」
うり坊のすごく小さいのがちょこちょことこちらに歩いて来た。ギボアーガの赤ちゃんだな。ギボちゃんってところか。
こういう場合大抵メイの方に行くことは学習済みだ。案の定ギボちゃんはメイの方に行った。
メイが両手で包み込むように身体を撫でると気持ち良さそうな顔をした。
ギボちゃんはブルマ姿のメイの股間に頭を突っ込むと高速で鼻頭を上下した。
「いや〜ん、もうエッチね♪」
ギボちゃんはさらに加速している。
「あぁ〜ん、ちょ、ちょっと、、、」
メイは股間だけでなく、胸まで縦に揺れた。ま、魔法ってこんな時使うんだな。いや勉強になるよ。
『バリバリ』
わっ! でっかいギボアーガが出て来たぞ。
俺はマイケルに手を伸ばした。
「待ってアレク!」
「何でだよ、こいつ魔獣じゃんか」
「きっとこの子のお母さんよ。私達が何か被害を受けてる訳ではないし、今特にお腹も空いてないからやっつける必要なんてないでしょ?」
言われてみればそうか。この前の被害だってこいつらはあの泥の所で普通に遊んでたただけで人の都合でやっつけてるだけだしな。まぁ俺達は食い物として沢山取っちゃったけどね。
「確かにそうだね。誰も被害を受けてないのに俺達が今やっつける必要なんてないね」
メイに抱えられていたギボちゃんはお母さんの元にちょこちょこと歩いて行く。
ギボアーガの大きなお母さんはまるで笑ったような表情をこちらに向け頭を下げて歩いて行った。
俺の脳裏に俺の『かあちゃん』の顔が浮かんだ。
うわっ! うげー 勘弁してよ。
◇◇◇◇◇
俺達は山を南側に下りながら見渡すとさっき見た遠くに栄えた街並みが見えた。
クリスさんに見せてもらった地図だとあの辺りはジョーカーという街らしい。
多分その手前の小さな町がヨッシーという町だろう。
Pちゃん切ってたからいい運動になったよ。
町に着いた。
町に入ると一瞬鼻をつく臭いがしたがすぐに臭い消えた。本当に一瞬だったけど錯覚かな。
さてと、ここの町の町長さんを探さなきゃね。
あの辺の井戸端おばちゃんに聞いてみるか。
「すみません。この町の町長さんにお会いしたいのですけど、どちらに行けば会えるでしょうか?」
「町役場ならここを真っ直ぐ行ってあの大きな木を右に入った所にだけど町長は今日も来てないんじゃないかしらね」
「そうなのよ奥さん、あの方とてもズボラでね半年も同じ服を着ていたそうよ」
「あーら、私は1年だって聞いたわ。もうパンツなんてガッビガビの、、、」
・・・
終わりそうにないぞ。切り出すタイミングにこっちの番がねー。もういいか。
「あ、ありがとうございます。じゃあ僕達はこれで、、、」
「あら、あなたこれからお話が面白くなるんじゃないの」
「い、急いでますんで、また今度うかがわせてもらいます」
「あらそぅお〜、残念ね〜」
ペチャクチャペチャクチャ〜。
◇◇◇◇◇
魔獣よりヤバかったな。
着いたけど随分と小さなって言うか殆どプレハブ小屋みたいだ。なんか一応看板はある。
えーと。
「アレク、中に誰かいるわよ」
「メイのセンサー?」
「ほら、すぐそこに見えるじゃない」
お姉さんがかなりだらしない格好で寝ていた。太もも丸出しだ。足先はハの字に開いちゃって脱力感半端ない。
異世界ってぽっちゃり系の人は少ないけど、ややぽっちゃりだ。シャツもスカートもユルそうで、まるで自宅で寛いでいるようだ。
「椅子で机に両足をあげて寝てるけど、、、今いいのかな」
「役場でこの時間なんだから今仕事中なんじゃないかしら」
ガラガラ。
うっわー、お姉さんの机、結構散らかしてるなぁ。俺も人の事はあまり言えないけど揺らしたら崩れそうだよ。
しかもここ、なんかちょっとへんなニオイだ。
「す、すみません」
・・・
「ごめんくださいっ!」
・・・
「起きないわね。仕方ないわ!」
バチっ!
わっ、メイ今火花出たよね。大丈夫かな?
「う、うーん。あー、どちら様?」
お姉さんは眩しそうに片目だけ開けたまま話した。
「あのう『レオーネ』から依頼でやって来ました。町長さんはいらっしゃいますか?」
俺はカードを見せた。
「『レオーネ』?・・・あーそう言えばそんなのあったね。もう随分と前だから忘れてたわ。町長はあたし」
えっこのお姉さんなの? いや先入観はよくないな。
「町長さんですか。どうも。俺はアレクで」
「私がメイです」
「あたしはデイジー。よろしく」
面倒くさそうにしてたが、ようやく普通に見てくれた。
デイジーさんパンツがガッビガビなのかw? まあ噂とかの真実はわからないからね。
「「よろしくお願いします」」
「えーと、依頼内容を教えて欲しいんですけど、、、」
「んじゃそっちのテーブルにかけて」
「はい」
町長のデイジーさんはけだるそうに立ち上がると壁際に立て掛けてあった脚立を持って来た。
棚の前に立て掛けたがなんか下に挟まって傾いてるよ。直すかと思ったらそのまま登ってかなり上の方から箱を取り出した。
何かが落ちて『あっ』と言ったが見なかった。転がって行くのをメイが後を追いかけた。
もう一度『あっ』と言うと脚立が俺の方に傾いて来た。
やばい、やばい!
俺は咄嗟に立ち上がり脚立の上の方にいたデイジーさんの腰の上辺りを両手を伸ばして倒れないように押さえた。
結構傾いてしまった。
俺の頭がデイジーさんのスカートの中に入りデイジーさんのお尻が俺のオデコに座った。
ムニュ〜。
俺はPちゃんで頑張ってそのまま押し返しデイジーさんと脚立は真っ直ぐに戻った。
かなり面倒くさがりなのはあってるっぽいけどやっぱり噂なんて信じられないや。 だってデイジーさんパンツなんか履いてないじゃんかw。
「ありがとう」
「いえ」
デイジーさんはあまり気にしていないようだ。俺もそっちの方が気が楽だった。
俺達はふたたびテーブルについた。
デイジーさんが降ろしてきたのはルーミアさんの温泉旅館で売ってるお煎餅の箱で蓋を開けると何枚ものメモっぽいものが出て来た。
「えーと、ざっくり言うと、ここに記録のある人達の所にだけによく出るんだよ」
「出るって、な、何がですか?」
「悪臭ゴーストさ。大きさは子供位で、酷い臭いがするんだわ。現れたり、消えたりしてどうにも手が出せないで困っている」
「小さいんですね。悪臭って酷いんですか?」
「去年は臭くて2人死者が出たかな。それから出会って病気で亡くなった人が4人ね」
「6人も、、、ヤバそうですね。現れたり消えたりって?」
「気がつくと部屋の中にいたり、そのまま消えて裏庭に出たりって言う感じね」
「出るって、移動している魔法みたいなものですか?」
「おそらく違うね。転移魔法なら白く光る口を開けてそこに入るからわかるんだ」
いや、そもそも魔法って何なのか俺達がわかってないか。
デイジーさんは箱の中のメモを出して見せてくれた。
どうやらメモ一つにつき一つの被害者宅が書かれていて、メモには何度も被害にあったように追加で被害が書かれているようだ。
かなりの数で同じ被害者。難解だな。
「空を飛ぶって言う都市伝説もあるんだけど、あれは誰も飛んでる所を目撃してないし羽根もないのに大コウモリなんていう噂もあるね。誰かの『大コウモリじゃないか』って言う推測からの単なる尾ひれなだけなんだけどね」
「えっなんでそんな事わかるんですか? 町長さん、詳しいですね」
「だってあたしも見てるし被害者の一人だもの」
なるほど、実際に見た人が言うんだからやっぱり噂なんてあてにはならないって事だね。
「アレク、わかったわ。明日のお昼過ぎくらいに次の家が襲われるわよ」
「えっ、なんでそんなのわかるの?」
「この犯人は周期性があるっていうかすごく几帳面に襲ってるわね。自然界に多い複数周回のフィボナッチね。おおよそ家の並びも推測出来るわよ」
メイはメモを隙間を変えて並び直した。
「あー、あってる、あってる。家の位置もこんな感じだ。国も保安局も誰も規則性が判らなかったのに、あんたすごいね」
「メイ、じゃあ次はどこなの?」
「ここよ!」
「そ、そりゃあたしんちだよ」
「えっ! じゃあ町長さんのお家を見せて貰えませんか?」
「えっとー、ちょ、ちょっと散らかしてるから後にしてくんないかな。今日は宿を教えてあげるからまた明日の朝来て」
「わかりました」
「んじゃ宿はここを真っ直ぐ東に向かって右側にガムールの宿と言う宿屋があるから」
「ありがとうございます。ではまた明日の朝来ますね」
「はい、ご苦労さまー」
俺はマイケルで役場をロケーション登録をした。
デイジーはアレク達を送り出すとアクビをしてもう一度眠りについた。
◇◇◇◇◇
最初のコメントを投稿しよう!