怒りのメイ

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怒りのメイ

 全裸の二人が館と言っていた場所に着いたらしい。  メイド服に『着きましたよ』と教えると少し口を尖らせ俺を見た。  なんだやっぱり俺が手をグリグリした方が良かったのか?  まぁヘタレだから許して欲しい。  ドレスとメイド服は馬車を降りると胸を隠しながらフラフラと館の玄関まで歩き館の人に何か話をしているようだ。 『違いますっ!』と聞こえたが、気が付くと俺とメイがまだ乗っている馬車が兵隊の様な大勢の人達に囲まれていた。  俺はヤバそうだなと思い馬車を降りた。    メイが俺の前に立ち、戦闘モードに切り替わった。  フォン。  別に見た目が変わる訳ではなくパワーアップして少しオーラの様に光るだけだ。 『やめて下さい。お嬢様と私はそちらの方に助けて頂いただけです』  とメイドが訴えるが、兵隊がいきなり大きな剣を振り回し襲って来た。  ブンッ!  メイはロボット三原則で人を殺したりは出来ない。  しかしどんな攻撃でも防ぎ、俺を守る為ならその矛盾は俺を守ることが優先される。  メイは振り回された大きな剣を片手で受けると剣が粉々に砕けた。  そして目にも止まらぬ速さで前衛にいる兵隊達の剣を全て粉々に砕いた。  ガッ! バキッ!  後ろから矢が数本飛んで来たがメイが全て掴み取った。  パシッ! パシッ!  いや『Pちゃん』なら当たっても全然平気なんだけどね。  ローブを着た魔道士の様な怪しい人が杖を振ると小さな石が高速で飛んで来た。  ヒュン、ヒュン!  すげー、これ魔法か?  初めて見たよ。  勿論『Pちゃん』もメイも、メイの服もこんな攻撃では一切のダメージはない。  こう言う場合はPちゃんが顔まで透明な膜で覆われ顔も守られ呼吸も可能だ。  水中でも宇宙空間でも普通にいけるらしい。  ゴゴゴゴゴ。  メイが相当怒ってる。  ロボット三原則がなければこいつらコテンパンだろうな。  しかし助けただけなのに、さすがに俺も頭に来たぞ。  人のようだから手加減はしてやるが、俺はマイケルをモードSの衝撃モードに切り替え広範囲に一発ぶちかましてやった。  メイ以外の全員が一度に気を失いその場に倒れた。  モードSは、運悪く心臓麻痺などで死ぬ事もあるらしいが普通は一日全く目を覚まさなくなるらしい。  館の玄関の方を見ると全裸の二人を押し留めていた兵隊の様な人達はうろたえて走って逃げた。  しかしこれはさすがに気分が悪い。 「メイ、もうここには用はないから少し休めそうなところを探して博士の連絡を待とう」 「そうね、私もそう思うわ。行きましょ。アレク」  俺達は館に背を向け近くの休めそうな場所を探した。  さっき飯屋のようなものがあったから、その辺りまで行ってみよう。  後ろで『お待ち下さい! 失礼致しました事をお詫びさせてくださいー!』 とか聞こえたが、ここは無視して行こう。気分が悪いんだ。 「アレク、あなたさっきあの二人に手を出したんじゃないでしょうね」  ギクッ! 俺の手にさっきの生乳の感触が蘇る。  はぁ〜柔らかくて暖かくってすんげー気持ち良かったなぁ。  館についたらあのメイド服口を尖らせてたから俺が楽しまなかった事に文句が言いたかったんだろうな。  クソっヘタレな俺。あそこはグリグリだろう。  女心は難しそうだが、まぁちょっとは勉強になったよ。 「いっいや、俺がそんな事する訳ないだろ」 「そんな事ってどんな事よ! もうアレクってば私が着いてないとホントに駄目なんだから」  とほほほ、俺の設定で俺を学習しているとはいえ、ちょっとこたえるな。  かあちゃんみたいだ。  結構歩いた。  飯屋っぽい店まで来たが、西部劇っぽい入口でカッコイイ店だ。  看板は読めないが飯屋だろう。しかし俺達は金を持ってないんだよな。  取り敢えず飯田橋博士に連絡してみよう。帰れる準備が出来たかも知れない。 「飯田橋博士、アレクです。聞こえますか?」 「あ、アレクか。い、いや、どうした?」  おかしいな、博士は何言い淀んでいるんだ。  どうしたじゃないでしょう。こっちが聞きたいんだって。 「いや、博士。俺達の帰る準備は出来ましたか?」 「いや、アレク。すまんっ! タイムトレーサーでも追いかけたがどの時代にもお前達はいなかった。多分事故で別の次元や別の世界に行ってしまったのだと思う」 「別の次元や別の世界って、異世界ですか?」 「おそらくそうだな。インカムが繋がるから望みはあるが、これからそっちの専門家の兄上を捕まえて相談しようと思っている」 『望みはある』って今は無理なのか。って望みかよ。 「はぁ」 「早くとも数カ月は掛かりそうだからそっちで何とか生き延びて欲しい」 「え〜! 異世界で数カ月生き延びろって、俺達お金持ってないんですよ?」 「メイがいるから何とかしてくれるだろう。でなければ働け。本当〜にすまん。後はこっちから連絡するまで待て。通信終わり」 「ちょっ、ちょっと待ってください。働けって俺まだ学生ですよ。飯田橋博士!」 切れてる。 どうする俺?。
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