取れた葉っぱ

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取れた葉っぱ

 翌朝起きてメイの準備してくれた朝食を食べてから町役場までマイケルで移動した。  デイジーさんはまだ来ていないようだったが暫く待つとやって来てそのままデイジーさんの家まで案内してくれた。  家の作りはこの辺りでは普通の家だと教えてくれた。  玄関を入り廊下を進むと左側にキッチンがあり、先の奥が応接間だそうだ。  他は寝室などだそうで見せては貰えなかったが、以前悪臭ゴーストはキッチンとその先の中庭に出たらしい。  キッチンに入ると少し雑然としていたが生ごみの臭いがした。まあ当たり前か。  中庭に出るドアから外を見るとドアの外にゴミがまとめられていた。  俺達は応接室で話を聞いた。  デイジーさんは少し恥ずかしそうに『普段はもっとちらかっている』と白状したw。  いや、なんとなく判りますよw。  以前見た悪臭ゴーストは子供のような姿で殆ど黒っぽい色だったそうだが、あまりの臭いで近づけずにハッキリとは見えなかったが人の子供のような姿だったそうだ。  近づけない程の臭さって、、、。 「メイ、相当な臭いみたいでちょっと俺想像できないけど、大丈夫かな?」 「そうね、臭いはみんな違うから実際に経験しないとなんとも言えないけど、伊豆の『焼き立てのくさや』なんて臭いけど、あれでローカルな値だけど1200Au位なのよ、臭気強度は5段階なのでそれ位なんじゃないかしら?」 「くさやとか見たこともないや。ちょっと想像できないな」 「多分これから経験できるわよ」  何事も、、、いやいやいや、こんなの経験したくねーw。  もしもこれからキッチンに出て捕まえても、どうやって捕まえておけば良いのかいいのかよくわからないぞ。  デイジーさんに相談してキッチンのロッカーを一つ空けてもらった。 デイジーさんはかなり面倒くさそうだったがこれもヨッシー町の為だとなんとか説得した。  いやー、出てくる出てくる。こんなに物がぐちゃぐちゃに入っているなんて、俺の勉強机の引き出しも真っ青だな。見なかった事にしようかと思ったけどさすがに手伝いましたよ。    マイケルでこのロッカーをロケーション登録して、もしも来たらこの中に閉じ込めることにした。  俺達はもうすぐ来そうな時間(お昼)になりそうなので、デイジーさんに家から避難してもらった。もしも臭いとかで死んじゃったらさすがにまずいからね。  一瞬、すごい臭いがした。 来たか?  畜産の臭いや刺激的な発酵臭、魚の腐った臭いなどが混じったかなり強烈な臭いだ。  Pちゃんに自動的にフェイスカバーが出て来た。これ臭いでも出て来るんだね。臭気強度は5overとなってサイドで赤く点滅している。これは完全に来たな。  俺達はキッチンに向かった。  なんかいる。小学校低学年くらいのすごく汚れた子供だ。汚れ過ぎて黒っぽく見えているが裸っぽいな。俺はすかさずセンサーを向けてみた。 妖精霊 ジーナ・フォイロ 両性 精霊 標準種 群れ 数:不確定 HP 21.3(AVG) MP 486(AVG) DF 12.2(AVG) 体高 106cm(AVG) 体重 31kg(AVG) 魔法 不確定テレポート、クリーンアップ  メイに見せた。 『妖精霊』ってなんだろ。初めて見たな。ジーナっていうのか。一人?しかいないのに『群れ』って出てるぞ。でも『群れ』だと平均値で出るんだね。数不確定ってなんだよ。  会話は出来るだろうか? あまり刺激しないようにそーっと話かけてみるか。 「ねー、君達」  ジーナはビクッとしてこちらを見ると、その瞬間にこちら見たままのそのままの格好で庭にいた。  えっ! 確かにこれはマイケルの捕獲機能とは違うようだ。見た目もなんかぶれて見える。消えるというより一瞬でブレて次々と位置が変わってる感じだ。  俺達が庭に目を移すと、6体位が見えるようだが、見えたり消えたりしている。   「アレク、同時には3体しか見えないわ。まるで量子の動きね、量子テレポーテーションみたいだわ」  メイ先生、難しいお話なら後でお願いします。  ジーナは特に逃げるような様子はなく、俺達に驚いただけのようだ。  良く観察してみると、見た目は小学生低学年の女の子のようで体型はぽてっとして可愛らしい。裸で、体中が汚れ肌の色は良くわからない。2人くらいだろうか? 手が銀色や緑になっているのがいる。  大事な所には小さな葉っぱがついている子もいれば何もついていない子もいる。『両性』ってなってたけど女の子っぽいぞ。でも胸はほぼない。  いや、俺は潔癖症とかではないけど、この子達見ると無性に洗ってやりたくなるなw。 「アレク、マイケルで捕まえられないかしら?」  なんとなくだが俺はマイケルで捕まえちゃうのは違うような気がした。 「いや、彼らは人を殺すような悪い子達にどうしても見えないんだよ。妖精霊って話が出来るかどうかわからないけど、メイ、お願い、もう少し頑張って話しかけてみて様子を見てみようよ」  メイは少し呆れたような表情をしたが、すぐに笑顔になり。 「わかったわ。アレクが思うようにやって頂戴」  と言ってくれた。  俺はキッチンからもう一度ジーナ達に話しかけてみた。 「やぁ、君達。今日はいい天気だね。みんなはここに何しに来てるの?」 「オ兄チャン ワタシタチ 臭クナイノ?」  やった、話せたぞ! 「いや、多分臭いんだけど、大丈夫なんだよ。少しお話出来るかな?」 「大丈夫ヨ。デモ 時間 アマリナイ 次ガアルカラ」  ジーナ達の一体が消えないで話をしてくれた。 「いったい何をやってるんだい?」 「ケガレチ ナオシテ イヤシロチ ツクッテル」  えっ? 何それ? 意味が分からない。メイがインカムで教えてくれる。 『ケガレチは[気の枯れた穢れた土地]でイヤシロチは[生命力盛んな地]の事だと思うわ。昔の日本の研究にあるのよ』  よく見るとデイジーさんの家の生ごみを持ってる。 『アレク、もしかしてあのゴミを肥料のようにして死んだ土地の土を再生しているんじゃないかしら?』  ケガレチって一体どこでそんなことやってるのだろう? 「ジャア ワタシ イクネ」 「ジーナちょっと、待って、、、」  ジーナ達は歩かずに次々と消えては現れ、庭から外へ行きどんどん進んでいく。 『メイ、追いかけよう!』 『うん』 「デイジーさん! 俺達ゴーストを追いかけますね!」 「おー頼む。こっちは臭くて入れないから、後で役場に寄ってくれ!」 ◇◇◇◇◇  俺達はジーナ達を追いかけた。速いというより、速度的には物凄い速さだ。  妖精霊って普通の生物じゃない気がするが、ジュリアさんはこの前の『プロングホルンが一番速い』って言ってたけど、それ以上だ。  まあこれは消えたり現れたりを繰り返しているだけで走っている訳ではなさそうだけどね。  彼らは北東へ向かっている。俺達が最初に異世界(こっち)に来た時の方角だ。シャーロットちゃん達がいたアンナックだっけ?   ようやく止まった。タカサック山から見た金属加工工場の脇だ。工場からはなんかすごい廃液が出て変な色の油のようなものが浮いている。   うっ、臭っさ〜。結構酷いな。  ジーナ達は生ごみを少し先の場所に置き、何か呪文を唱えると生ゴミは土の山になった。  すると桶のようなものを取り出し廃液に入り廃液の上澄みを(すく)いだした。  いや、やばいって、そんな中に入っちゃ。 『アレク、この子達、工場廃液で酷くなった土地を生ゴミを使って生き返らせようとしているんじゃないかしら』 『特定の人達が襲われるって、じゃあもしかして生ゴミとかでだらしなく汚しちゃって片付けない人達から回収しているだけって事かな?』 『多分そうだわね。でも悪臭や菌によってエルフ達に被害が出ているから、退治しないでなんとかできないかしら』 「オ兄チャン 何カ チイサナ イレモノ 持ッテナイ?」  今度はジーナの方から話しかけて来た。 『メイ、小さい壺があったよね』  メイは後ろを向くと蓋の出来る小さな壺を出してくれた。  俺はジーナに壺を渡した。喜んでいるようだ。  ジーナは何か小さなものを壺に入れ蓋をすると、祈るようにして壺が光り、そして光がおさまった。 『ア、アレク、今のはもの凄い技術だわ、放射性物質を入れたのだけど、ジーナが祈ったら放射線が出なくなったのよ。わー、これものすごく知りたいわ。この技術は今の日本を少しでも回復出来るかもしれないのよ!』 『えっ? そんな事が可能なんだ。いや妖精霊だから出来るのかもしれないけど、今現実に出来たのならきっと出来るんだね』  簡単には聞き出せそうにはないと言うか、そこまで会話が成り立っていないけど、もう少し話してみよう。 「オ兄チャン アリガト ミツケル 時間ガ 助カッタ」 「いや、丁度持っていただけで使わないから有効に使ってもらえたなら良かったよ」 「デ オ兄チャンタチハ ワタシタチ ヲ タイジニキタノ?」  核心を言われてしまった。正直に話すしかないな。 「実はそうなんだ。だけど、もう俺達は君たちを退治なんてする気はないよ」 「ホント?」 「ああ、本当だ。だけど、君たちの悪臭と菌で被害が出ているから、ちょっとお兄さん達と一緒に一度綺麗にしないか?」 「キレイッテ ナニ? イヤシロチ?」 「いや、みんなの身体を洗うだけだよ。それだけで退治されなくなるんだ」 「ワカッタ イイヨ イレモノモラッタカラ ジカン ダイジョウブ」  よし! 「メイ、さっき川があったよね。あそこまで行って、、、」 「アレク、ここで大丈夫よ」  とメイが言うと、俺にタオルを手渡してくれた。  メイはジーナの方へ行くと、一人のジーナの前でシャワーのように丁寧にお湯の細かい霧のようなもので洗浄した。ゆ、指先からお湯が出てる。み、見なかった事にしよう。 『自然に優しいシャンプーを使いましょうね♪』 「コレ スゴク キモチイイ」  一人のジーナが言うと消えたり現れたりしていた他のジーナも現れたままで3人が列のように並ぶ。  ジーナ一人を洗い終わると、メイは俺にふった。 「アレク、そのタオルで拭いてあげて頂戴」 「わかった」  最初のジーナを拭き始めたが、どう見てもこれ普通のカワイイ女の子だ。本当に妖精霊だよね。  もちろん全裸だが、か、勘違いするなよ。細かい隙間とかも中まで拭かなくちゃならないんだからな。  俺はちょっと赤面しながらも頭、耳、首、胸、お尻、おまた、足まで丁寧に拭いた。ジーナは拭いている間、目を閉じて口も『ンーっ』てしてる。可愛いな。葉っぱは取れていた。  よく見ると体の構造は人と同じだから、これはちょっと犯罪っぽいのは確かだなw。 「ほい、出来たぞ、次だ」  3人のジーナを拭き終わる頃には、臭気強度の赤い点滅が消え、臭いが軽くなったようだ。フェイスカバーが消えた。  さっきまで真っ黒で、緑や銀色だった腕のジーナもみんな綺麗な肌色になった。妖精霊も人やエルフと同じような肌の色をしているんだね。 「オニイチャンタチ アリガト キモチヨカッタ」 「どういたしまして、これで悪臭ゴーストなんて言われなくなるから退治なんてされないよ」 「デモ ワタシタチ マタ スグ モトニナル」 「ヨッシーの町のこれまで被害にあったという人達もゴミをきちんとするようにするし、この工場も国の人達にこんな廃液を出さないようにお願いしてみるよ。それまで暫くの間待ってもらえないかい?」 「デモ ナカナカ ケガレチ イヤシロチ ニ ナラナイ」 「そうだね。汚染する方は簡単に出来るけど、すぐには元の土地には戻らないかもしれないね。精霊の君たちが一生懸命治してくれてたんだね。本当にありがとう。これは人のせいだ」 「ダイジョウブ コレ ワタシタチ ノ シゴト」  俺達はジーナ達の存在の有難さをひしひしと感じた。 「ところで、さっき放射性物質の放射線を防いでいなかったかい? もしよかったらどうやったのか教えて欲しいのだけど、、、」 「ホウシャセン? アア ツボノコト? アレハ アレダケ 時ヲ 早ク 進メタ」  えっ! 「メイ、そんなこと出来るの?」 「タイムマシンも博士のお兄さんが作ってるから、このアイデアで出来るかもしれないわ! これ凄いわよアレク!」  俺は一人のジーナの頭をクシャと撫でた。 「ジーナ、ありがとう。じゃあ俺達は交渉してくるからね。また会おうな」 「オニイチャンタチ アリガト」 「バイバイ」 「君達はちゃんと新しい葉っぱ見つけておくんだぞ。じゃあまたね!」  俺達はジーナ達と別れヨッシーの町役場にマイケルで飛んだ。  かなり遅れて工場の脇にミオが到着したが、概ね話は聞けたようだ。 「ま、また、飛んだの? も、もう走れないよ〜。何この仕事。早く帰りたい。うぅぅ」 ◇◇◇◇◇  町長のデイジーさんが役場に来ていた。  デイジーさんにあらましを話し、町の被害にあった人達は、生ゴミなどをだらしなく片付けていない人達で、それをジーナ達が持って行っていただけだという事を話した。  デイジーさんは、顔を赤らめかなり恥ずかしそうにしていたが、町長として、これらの人達に『ゴミを正しく処理して清潔にする』ように通達し、そうすれば『悪臭ゴーストは来ない』と説得してくれると約束してくれた。 「おそらく、そう通達してもきちんと片付けない、だらしない人はいるかもしれません」 「いや、恥ずかしながら、私もずぼらでかなりだらしない方だからな。でもそういう家があったら、町役場として責任もって対処するよ」 「よかった。妖精霊たちは人のために働いてくれていたのに、俺達は知らずにやっつけちゃうところでしたよ。助かりました」  デイジーさんは俺達に感心したように「ほぼ完了だな」とカードにサインをくれ、二重丸をつけてくれた。後はアンナックの工場との交渉だけだ。  デイジーさんと別れ宿までマイケルで飛んだ。  宿屋の主人は残念そうにしていたが、きちんと宿泊費を2日分返してくれた。『また来てくれ』と地が強面なのに愛想よくお土産にとパンをくれた。 なんかミオちゃんの情報と違って、いい人なんじゃないかな。 ◇◇◇◇◇  俺達は、そのままレオーネに飛び、クリスさんにカードのサインを見せて詳しく説明した。  クリスさんは感心したように聞いていたが、目を閉じて30秒くらい黙ったままでいた。 「この前、アンナックのシャーロット嬢があなたを捕まえたでしょ」 「はい、結構逃げるのが大変で、確か『レオーネ』に依頼したって言ってましたよ」 「ごめーん。あれ、私が受けたのよ。仕事だからアレクくん達って判ったのだけど、、、」 「あははは、まあ仕事なら仕方ないですよ」 「そのシャーロット嬢に今ここに来てもらうようにしたわ」  シャーロットがやって来た。 クリスさんがさっき呼んだのだろうか?  ルチアさんとミカちゃんもついて来ていた。  俺達はジーナの一件を詳しく話した。シャーロット嬢は申し訳なさそうにして俺達に謝った。 「あれはアンナック領でやっている工場なのよ。私そんなことになっているなんて本当に知らなかったの。ごめんなさい」  いやー、ツン系の人が謝るとなんかいいな。いや、そうじゃない俺達に謝ってもらっても何も解決しない。 「じゃあ領主の親父(おやじ)さんにどうにかして貰えるように話してもらえないかな?」 「わかったわ。お父様にお話して、きちんと改善する事をこのシャーロットがお約束させて頂きます!」 「ありがとう、よかった。これで一件落着だね!」  ミカちゃんが目をキラキラとさせて話を聞いていた。 「アレクお兄ちゃん達、妖精霊さん達とお友達になるなんてミカすごくあこがれちゃう」 「あはは、たまたまそういう仕事だったからね」  シャーロットちゃんは決意の表情で『レオーネ』を後にした。 ◇◇◇◇◇ 「アレクくん、私、あなた達を売っちゃったみたいでちょっと気まずかったのよ。あまり気にしていないようで少し気が楽になったわ。でもお詫びに明日非番だから、私とデートしない?」 「ク、クリスさんと、デ、デートですか?」 「えぇ。メイちゃんも一緒に。暖かくなってきて、タカサック山の『ピッピピア』が開園したのよ」 「『ピッピピア』ってなんです?」 「アイリ園っていう遊園地とプールの複合施設よ」  遊園地とプールでクリスさんとデート? 「やったぁ、めっちゃ嬉しいです。どうすればいいですか?」 「デートって言っても約束通りお金持ちのアレクくんがおごってくれるのよ。もう少しで仕事が引けるから待ってて頂戴。一緒に水着を買いに行きましょう♪」 「判りました。メイも一緒に水着を買って行こうな」 「わーい♪」  俺の胸にロックンロールを踊らせてしばらく『レオーネ』のテーブルで待っていた。 ◇◇◇◇◇  ミオがナオミの所まで戻った。 「お姉ちゃん、もう、無理。お尻は痛いし、何よあの子達、あんなに足が速くて簡単に転移出来るなんて聞いてないわ!」 「あら、ミオナちゃん久しぶりね。だから『直接干渉』していいって言ったでしょ」 「ルーミアさん、すみません。一緒に行動までは出来ませんでした」 「でも、アレクくん達って、悪臭ゴーストをもう解決しちゃったのね?」 「はい、妖精霊でした」 「まあ、本当に常識外れの凄い子達だわ。間違っても敵に回らないことね」 「私もそう思いました」 「じゃあお尻を見せて頂戴」  ルーミアがミオの痛みに気づき治療を申し出た。ミオはお尻をペロンと出すと、ルーミアが魔法で治してくれたが、何故かその後ルーミアにお尻をペチンと叩かれた。  痛ったー!  (もう、なんで〜) ◇◇◇◇◇  
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