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夢見るおたまじゃくし
おたまじゃくしのたまちゃんは、さとしくんが近所の川で掴まえてきた、おたまじゃくしです。
たまちゃん、という名前はさとしくんがつけました。
たまちゃんは、カエルの仲間たちと一緒に、さとしくんの家の水槽で過ごしています。
ある日のこと、さとしくんは黄色の帽子をかぶって幼稚園に出かけました。
それを見たたまちゃんは、何でも知ってるおじいさんカエルにたずねました。
「ねえねえ、さとしくんはあの黄色の帽子をかぶってどこに行くの?」
「あれはね、幼稚園というところへ行くんだよ。」
おじいさんカエルは答えました。
「いいなー、ぼくもカエルになったらあの黄色の帽子をかぶって幼稚園に行きたい!」
「たまちゃんはカエルだから、幼稚園には行けないよ。」
「なんでカエルは幼稚園に行けないの!?」
「幼稚園は人間の子どもが行くところなんだよ。」
「そうなんだ‥いいなー。」
たまちゃんは、カエルになって、黄色の帽子をかぶって幼稚園に行く夢を見ました。
とても楽しい夢でした。
またある日のこと、さとしくんのお母さんが乗り物に乗って出掛ける姿をたまちゃんは見かけました。
「ねえねえ、さとしくんのお母さんは何をしているの?」
「あれはね、オートバイという乗り物に乗って出掛けたんだよ。」
「いいなー、ぼくもカエルになったらオートバイに乗りたい!」
「オートバイは人間の乗り物なんだよ。カエルには乗れないんだよ。」
「そうなんだ‥いいなー。」
たまちゃんは、カエルになってオートバイに乗る夢を見ました。
とても楽しい夢でした。
またまたある日のこと、さとしくんのお父さんが庭で本を読んでいる姿をたまちゃんは見かけました。
「ねえねえ、さとしくんのお父さんは何してるの?」
「あれはね、本というものを読んでいるんだよ。本には色んなことが書かれているんだ。」
「いいなー、ぼくもカエルになったら本を読んでみたい!」
「本は人間のものなんだ。カエルは本を読めないんだよ。」
「そうなんだ‥いいなー。」
たまちゃんは、カエルになって本を読む夢を見ました。
とても楽しい夢でした。
またまたまたある日のこと、さとしくんのおじいちゃんが、縁側でお昼寝をしていました。
「ねえねえ、さとしくんのおじいちゃんは何してるの?」
「あれはね、お昼寝をしているんだよ。」
「いいなー、ぼくも帰りますなったらお昼寝してみたい!」
「お昼寝は人間にしかできないんだよ。カエルはあんな風に寝転んで横になることはできないんだよ。」
「そうなんだ‥いいなー。」
たまちゃんは、カエルになってお昼寝をする夢を見ました。 とても楽しい夢でした。
たまちゃんは楽しい夢を見ましたが、悔しい気持ちでいっぱいでした。
もうすぐカエルになるのに、人間みたいなことは何にも出来ないのです。
「ぼくはカエルじゃなくて人間になりたいよ!カエルになんかなりたくない!」
たまちゃんは、もう足も生えて尻尾も短くなってきていましたが、そんなことを言っておじいさんカエルを困らせていました。
「でもね、たまちゃん、人間には人間にしか出来ないことがあるように、カエルにはカエルにしか出来ないことがあるんだよ。だからカエルのことを羨ましいと思う人間もいるかもしれないよ。たまちゃんはカエルなんだから、カエルらしく生きていけばいいんだよ。」
「そうなのかな‥?」
たまちゃんには、まだよく分かりませんでした。
それからしばらくして、さとしくんのお家が引っ越すことになり、たまちゃんたちは近所の川に放されることになりました。
もうカエルになったいたたまちゃんは、初めて外の世界を見ました。
そこにはどこまでも続いてそうな川の流れがあって、きれいな花が咲いていました。
おじいさんカエルは言いました。
「たまちゃん、この世界はとても広いんだ。そしてカエル以外にも色んな生き物がいる。この世界の中でカエルはカエルの生き方で生きていくんだよ。」
たまちゃんは、ジャンプしてきれいな花の上に飛び乗ってみました。
少し遠くで、さとしくんの声がしました。
「カエルは学校に行かなくていいんでしょ?ぼくカエルになりたいよ!」
たまちゃんは、これからどこへ行こうか、ワクワクしてきました。
よし!あの川を渡って向こう岸へ行ってみよう!
たまちゃんは思い切りジャンプして川の中へ飛び込みました。
おしまい
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