第二十一話:連なる鋼鉄の兵士

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第二十一話:連なる鋼鉄の兵士

 ミナトはビスケットをくわえながらバリケードから少しだけ顔を出してのぞき見る。  まだ数十メートル先ではあるが全部で十体のロボット兵が、機械音を立てながらゆっくり歩いてくる。 「帝国が研究していた『無人型独立機動兵器』のプロトタイプってところか」 「なにそれ?」 「簡単に言ったら、自立思考コンピュータを積んだ無人兵器だよ。あのロボットが勝手に考えて、勝手に敵を倒して、勝手に強くなるんだ。人的資源の消費を減らせる夢の兵器さ」  イーサンが照準器をのぞき、慎重に狙いを定める。 「要するにAIってところか……。この世界も案外ハイテクだな」  ビスケットを水で流し込み、ミナトもアサルトライフルを構える。  実用的かはともかく、ミナトの世界にあんな兵器は無かった。  もしかしたらああいう軍事技術はこちらの世界の方が優れている部分があるのかもしれない。 「あぁ、夢は叶わないからこそ、夢なんだと思っていたんだけどな。アラン、悪いが魔術を使えるように準備しておいてくれ。あの量だ、下手すりゃすりつぶされるぞ」 「了解」  アランも手早く水でビスケットを流し込みライフル銃を構える。 「頑張ってね、ミナト」 「ああ、カエデも気を付けて」  本邸に走っていくカエデを見送って、照準器をのぞく。  ロボット兵はゆっくりとであるが、着実に近づいてくる。 「あの装甲は銃弾を耐えるんだろ? あんな数どうするんだ?」 「首だ。俺の記憶が正しければ、奴の中枢部は頭部に集中しているからな。装甲が薄い首を一撃で飛ばす。こんな風にな」  イーサンはそう言って引き金を引く。  その瞬間、ロボット兵の頭部が吹き飛び、背中側から倒れこむ。 「な?」と言わんばかりにイーサンがミナトを見る。 「いやいや、こんなのいきなりできるわけ……」  ズドン! という音とともに、端のロボット兵が同じように頭部を吹き飛ばし後方に倒れこむ。 「ライフルなんて久しぶりに撃ったけど、まぁこんなもんかな」  中学生くらいの年のはずなのに、アランがなんだかえらくハードボイルドに見えた。 「よく狙え、ミナト」 「お、おう……」  掃射攻撃をバリケードに隠れてやり過ごし、再びアサルトライフルを構える。  そして改めて照準器をのぞき狙いを定める。    大きく深呼吸をして、息を吐き切った所で引き金を引く。  その瞬間、ロボット兵の頭部が吹っ飛ぶ。 「ああ、なるほど……」 「まぁ、そんな感じだ。行くぞ、アラン。後はまとめて片付ける」 「了解」 「援護は頼んだ」と、イーサンとアランがバリケードを飛び越え、ロボット兵に突っ込んでいく。 「援護って言われても……」  イーサンとアランが装甲のすき間を的確に狙い、ロボット兵を機能停止に追い込んでいく。  援護を頼まれても正直やる事がない。 「……いや、援護ってこれか!」  イーサンの背中に向けて機関銃を撃とうとしているロボット兵の、腕を狙い撃ち吹き飛ばす。  イーサンがこちらを見て、二ッと笑ったので、ミナトは親指を立てサムズアップのジェスチャーを出す。 「あいつ、気づいてたんじゃないか?」  ミナトは苦笑いを浮かべながら、次々とロボット兵の腕部や脚部を吹き飛ばしていく。    こうして十体のロボット兵を難なく片付けると、反カーヴァー派らしき男が白い旗を振ってこちらへ走ってくる。  そしてイーサンと少し話をしたのち、元来た方へ戻っていく。 「なんだって、イーサン?」 「戦闘は終わりだ、三十分後トップ会談がここで行われる」 「トップ会談?」 「ああ、ダンテと反カーヴァー派の代表との会談だ。俺はこんなのどうせ話にならないっていったんだけどな……」  イーサンはため息をつきながら、頭をかいている。 「だけど、この話し合いでこの戦いを終わらせる事ができるかもしれないだろう?」  屋敷から歩いてきたダンテが言った。 「いいや、残念だがその可能性は低いと思うぞ」 「かもな、だけど可能性がゼロじゃないなら、俺はやるさ。皆、ひとまずご苦労だった! すまないが、もう少しだけ頑張ってくれ!」  ダンテの言葉に呼応するように、男たちが雄たけびを上げる。 「ミナト、イーサン、アラン、カエデもありがとう。悪いが、もうちょっとだけ頼む」 「はぁ……。あんたにそう言われたら仕方ないな。まぁ何とかなるだろう」  イーサンが肩をすくめる。 「うん、疲れたからもう眠いしね」 「あぁ、そうだな」  ダンテが大きなあくびをしたアランの頭をポンポン叩く。 「ミナト。お前もよくやってくれた。ありがとうな」 「いえ、俺は自分のできる事を必死でやっただけですから」 「フッ、そうか。ずいぶん、顔つきが変わったように見える。あとかしこまるのもやめてくれ、そういうのは慣れてないんだ」 「分かった、ダンテ」 「ああ、それでいい。カエデもありがとう。うちの厳しいメイドたちが随分褒めてたよ」 「なんて言っているの?」と、カエデがミナトを見る。 「メイドさんが、カエデを褒めてたって」 「本当? 邪魔になってないか、心配だったから良かった」  カエデがホッと胸をなでおろしている。 「さぁ、お前らそろそろだ。気引き締めてけよ!」 「「おぉおお!!」」  暁の空に、男たちの雄たけびが響き渡った。
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