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第六話:牢屋にてあなたを想う
レンガ造りのジメジメとして暗い牢屋での生活を始めてから、四日が立った。
綿など少しも入っていない、かび臭い木のベッドの上で少女は鉄の腕輪をはめられた右手をさする。
腕を動かすたびに、腕輪がこすれて痛い。
(おい女、食事だ)
男が何かを言って、皿を牢屋の前に置いて去っていく。
よく分からないが、ストーカーから逃げている最中に、気づけば言葉が通じない異国の地に立っていて、そして今牢屋に閉じ込められている。
今日も食事はこのコッペパン一つだ。
乾燥しきってのどを通らないコッペパンを、水で何とか流し込む。
二日前に投げ入れられた水筒も、もう少しで空になる。
「ミナト……」
ふと幼馴染の名前をつぶやく。
刀を持った男にかつがれて離れていく彼はまっすぐ手を伸ばしてカエデに言った。
(カエデ! 絶対に助けに行く! だから少しだけ待ってて!)
ミナトだって同じ一般人だ。
こんな訳の分からない危険な場所に助けに来れるはずはない。
だけどなぜか信じられる。そんな気がする。
「私も頑張る。あなたが助けに来てくれるまで」
今できるのはミナトを信じるだけ。
目をつむりギュッと両手を合わせる。
「ミナト、私はあなたの思いに必ず応えて見せる」
怖かっただろう、足はすくんだだろう。
だけどミナトはストーカーから守ってくれた。
こんな自分の事を好きだと言ってくれた。
だからカエデは信じる。
ミナトが絶対に助けに来てくれると。
そして幼いころから秘めていた想いをあなたに伝えるために。
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