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第七話:カビ臭い牢屋であなたを信じる
いつもの様に乾いたコッペパンを水で無理やり流し込み、ベッドで横になっていると、ガチャッという音とともに数人の男がズラズラと牢屋の前に集まってくる。
そして先頭の男が、この一週間近く一度も外れる事のなかった牢屋の鍵を開ける。
そのまま男が一人牢屋に入ってきて、カエデの腕を痛めていた鉄の腕輪を外す。
(移送だ、出ろ)
男が何かを言って、カエデの腕を乱暴に引っ張りスタスタ歩いていく。
突然引っ張られたので体勢を崩しかけたが、何とか立て直しついていく。
牢屋がいくつかある部屋を出ると、突然後ろから目隠しをされ乱暴に肩にかつがれる。
「ちょ、痛ッ。なに!?」
せめてものと抵抗と、少し手足をジタバタしてみるが何の影響もなかった。
そのまましばらく担がれたまま運ばれた後、意外にも丁寧に降ろされ、硬い何かの上に座らされる。
車に乗せられたのだろうか。
エンジン音、そして少し尻に振動を感じる。
そして乱暴にバックドアが閉められ、車が発進する。
このままどこか遠い所につれていかれるのか、何かさせられるのか。
もしかしたら、このまま殺されてしまうかもしれない。
もちろん恐怖心はある。
しかし自分でも不思議なくらい心は落ち着いていた。
ふと幼馴染の顔を思い浮かべる。
朗らかで、親しみのある笑顔。
彼のそんな笑顔を見ているだけで、どんな悲しい事があってもカエデは笑う事ができた。
(ミナト、信じてるよ。絶対に来てくれるって……)
ギュッと汗ばんだ手を握る。
そして十五分ほど走った辺りで、突然車が止まった。
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