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「れっきとした高校生よ。桃弥は」
…誰? この声。
見上げると、切れ長の目をした美人さんが私達を見下ろしていた。
「桃弥は初等部の頃から全然成長してないのよ」
「そうなんだ… あの、あなたは…」
私が名前を聞くと、美人さんが目を丸くして、香奈が私の頭を叩いた。
「全くもう! 後ろの席の人くらいすぐに覚えなよ」
「いいの、いいの。私は武藤千晶。宮島さんの後ろの席よ。よろしくね」
美人さんが軽く首を傾げてウインクする。
こういう仕草が似合うっていいなあ… うらやましい。
ぼんやり見上げていた私に、香奈が眉をひそめる。
「ねえ、鮎巳。この人の名前、覚えた?」
えっと… あれ?
首を傾げた私に、香奈がため息をつき、美人さんはケタケタ笑った。
「いいなー、その天然キャラ。桑原さん、退屈しないでしょ」
「大変なんだよ。あたしの名前だって、最近やっと覚えたんだから。あ、あたしの事は香奈でいいよ」
「私も、千晶って呼んで」
「わ、私も鮎巳って呼んでね!」
3人で頷き合った時。
「いたいた。翔!」
甲高い、舌っ足らずな声が響いた。さっきの小学生もどきが、妙に冷たい顔立ちの長身美形に駆け寄っていく。なんか年の離れた従兄弟って感じ。ふと香奈が美人さんを見た。
「えーっと、村上くんだったっけ、あの子」
「そう、村上翔。桃弥の双子の片割れ」
「ずいぶん似てない双子だね」
香奈が肩をすくめた。私はなんとなく双子の顔を見比べた。
うーん… どっかで見た気がする。髪と目の色が違えば…
「あ!」
「な、何? いきなり」
いきなり叫んだ私に驚いた香奈が首を傾げた。
「あの子、今朝の子そっくり」
「今朝の子?」
美人さんが首を傾げる。香奈が肩をすくめた。
「朝、迷った時に講堂の場所を教わったんだって」
「校舎の裏の、大きな木の上から飛び降りてきたの」
「木? それって音楽科棟じゃない。どうやって間違えたの?」
美人さんが不思議そうに首を傾げた。
「そう言う子なのよ、鮎巳は」
香奈が肩をすくめ、美人さんがケタケタ笑う。
うけてる。嬉しくない… と思った瞬間。
「今のお話、詳しく聞かせて!」
目の前に小学生もどきの顔があった。
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