新学期は大騒ぎ

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 いきなり乱入してきた小学生もどきは、妙に真剣な表情で私を見ていた。  こうして見るとあの少年とは違うなあ。なんで似てるって思ったんだろ… 雰囲気かな。 「どうしたのよ、桃弥」  美人さんが小学生もどきに声をかけた。 「ちょーっとね。ねえ、その子、どこにいたの?」  小学生もどきは肩をすくめると、私の顔を見た。 「校舎の裏の、大きな木の上から飛び降りてきたの」  私はさっきの説明を繰り返した。小学生もどきは後ろにいた長身美形を見上げる。  やっぱり、この2人は似てないなあ。栗色の髪と目の色は一緒だけど、長身美形は切れ長の目だし… あれ? この子もあの少年に似てる。顔だけ見たらこの子の方が似てるかも。 「え?」  ふいに私の身体が宙に浮いた。 「翔? どうしたのよ」  美人さんが私を見上げて目を丸くする。長身美形が私を荷物みたいに肩に担ぎ上げたのだ。 「これ、借りるぞ」 「私は物じゃない!」  私は長身美形の手から逃れようと暴れた。でも、びくともしやしない。香奈が長身美形の前に立った。 「鮎巳をどこに連れていく気?」  よかった。持つべきものは優しい友達ー。 「苦労するの翔くんだよ。鮎巳、通学路覚えてないんだから」  前言撤回! なんでそこを気にするのよー。 「駅まで送れば帰れるんだろ?」  長身美形が香奈を見た。香奈は肩をすくめた。 「電車までよ。乗り間違うから」 「鮎巳最高! そこまでいくと、お見事! としか言えない」  美人さんがケタケタ笑った。  …みんな、この状況を楽しんでる。私の事なんか気にしちゃいない。 「…わかった」  長身美形がうなずく。  私は抱え上げられたまま教室から連れ出された。
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