ナナコと星夜の奇跡

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   会田 星夜(あいだ せいや)  今も私の登録電話帳の一番上を陣取っている。消したくても消せない、今も忘れられない人。  違っているかもしれない。ナナコなんて、私みたいなありふれた名前、他にも沢山いる。  でも、別れた時期、あの曲、誕生日――どれも、私の話をされているようだ。  三年ぶり。何て言う?  元気だった?  会いたかった?  どうしていたの?  ボタンを押そうと思っても、あとひとつの勇気が出せなかった。  こんな時、晴れていたら違っていたのかな。  その名の通り星が好きな彼は、何時もキラキラ輝いて楽しそうに星の話をしてくれた。  今日は、雨で何も見えない。  彼の笑顔は今も忘れない。  優しい笑顔しか思い出せない。  それなのに、私が彼を苦しめた。私がまだ学生で考え方が幼かったから、社会人の大変さを理解していなかった。しかも星夜さんは銀行員だったから仕事が大変で、当時は支店の異動もあって、それでも私との付き合いを優先してくれていたのに、我儘言って困らせた。  今更、連絡なんかできない。
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