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「今日はどうだった?」
ためらいながら僕は問う。君の目を見る。
「楽しかったよ。私を選んでくれてありがとう」
君がはにかんだ。
僕は視線を足元に落とした。
君も質問を返してくる。
「酒井くんは?」
「もちろん、楽しかったよ」
僕は俯いたまま答えた。
しかし、これではいけない、と思い切って顔を上げた。
彼女が大きな目で僕を見ていた。
「君に、言いたいことがあるんだ」
僕が言うと、君は首を傾げた。
右耳にかけていた髪の毛がはらりと落ちて、唇にはりつく。
取ってあげたほうがいいのか逡巡している間に、君は髪を小指で耳にかけ直した。
「それは『彼女』としての私に? それとも、そうじゃない私に?」
君に先程までの笑顔はない。
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